憲法21条は言論や表現の自由を保障している。この前段となる12条では憲法が保障する「自由及び権利」は、「国民は、これを濫用(らんよう)してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と規定している。4月の衆院東京15区補欠選挙で対立陣営の街頭演説を妨害したなどとして、警視庁は公選法違反(選挙の自由妨害)容疑で政治団体「つばさの党」の関係先を家宅捜索した。同党は他候補の演説中に大音量で罵声を浴びせ、クラクションを鳴らすなどの妨害を繰り返し、選挙カーを執拗(しつよう)に追い回すなどの危険行為もあった。極めて悪質である。
「選挙の自由」は対立陣営にもあり、これは明らかに侵害された。異常な環境下で候補者の演説を聞くことができなかった有権者もまた、直接の被害者である。国民の常識や良識に照らして悪質な行為が、合憲や適法であるはずがない。警視庁の捜査は妥当である。多くのメディアが北海道警を非難したが、札幌高裁は男性について、警告を無視して大声での連呼をやめず、演説車両に向かって突然走り出すなどの行為があり警察官の判断は「客観的合理性を有する」と認定し、賠償命令を取り消した。憲法12条はまた、「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」ともうたっている。「自由」のはき違えを許してはならない。
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