米男子ツアーのファンは、キャメロン・スミス(オーストラリア)、ジョン・ラーム(スペイン)、ダスティン・ジョンソン(米国)らのプレーが見られなくなって残念に思っている。一方で、LIVゴルフを応援するファンはフィル・ミケルソン(米国)、セルヒオ・ガルシア(スペイン)、リー・ウェストウッド(英国)らかつてのトッププロの活躍というより衰えを目の当たりにして、同様にがっかりしている。3人とも移籍後は未勝利だ。そんな中で、LIVゴルフはアンソニー・キム(米国)との契約を発表した。そして彼は先週末、サウジアラビアで行われた大会で12年ぶりに競技に復帰している。それは、ある意味で驚きだったが、事情を俯瞰(ふかん)すれば、すとんと腑(ふ)に落ちた。彼らは、互いに互いを必要としていたのである。
キムはアキレス腱(けん)、背中、手首を痛めており、当初はその治療のための離脱と見られていたが、そのままクラブを置いている。驚きの声はしかし、思ったより少なかった。ゴルフに対する彼の熱意が薄れていたのは、多くの人が感じ取っていた。 選手らから、彼の名前を聞くこともなかった。キムには、米男子ツアーに友人と呼べる選手がいなかった。09年のプレジデンツカップでは、チームディナーを退席し、彼といつも一緒にいる友人らと出掛けていった。彼には、米男子ツアーでの居場所がなかったのだ。 一つはっきりしていることがある。38歳になった彼は、一緒にプレーしていた選手らがLIVゴルフから莫大な契約金を手にするのを見ていた。かといって、その金額に見合うような選手は一握り。であれば、自分でも通用するのではないか、自分にも声がかかるのではないか――。
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