以前、ある医師から聞いた話だが、患者の状態が最もよく把握できるのは、実は「彼らが帰る際の後ろ姿」だという。クルマも、リアのデザインがその印象を左右することが少なくない。その出来に大きく影響する構成要素がテールランプである。
筆者が思い出すのは、1990年の3代目「日産プレジデント」(JG50型)だ。新車発表会の席上、後部のデザインは「見送る人の心が和やかになるようなデザイン」と解説された。「インフィニティQ45」をベースとしながら、レンズユニットを別物にしてまで、それを表現したかったのかと感心したものだ。さすがショーファードリブンである。ちなみに日本以外では、「お客が見えなくなるまで見送る」という習慣は、筆者が知る限り存在しない。どんなに親しい人物でも、高級ホテルでも、こちらがクルマに乗れば、みんな建物内に引っ込んでしまう。したがって、プレジデントのエクステリアを担当したデザイナーの気遣いは、かぎりなく日本的だ。いずれも、デザイナーいうところの「wowエフェクト」がある。各社の灯火類担当デザイナーをたたえたい。どちらも1970年代の日本の流行語を引用するなら、「わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ」と思わずつぶやいてしまうが、玄人好みであるところが逆にうれしい。メルセデス・ベンツにも複雑な心境を抱いている。長年のアイコンだった凸凹付きテールランプが、フェードアウトしようとしているからだ。たしかに、カタログで
策士なのはルノー系のブランド、ダチアである。2018年のクロスオーバーSUV「ダスター」のテールランプは、2015年「ジープ・レネゲード」を意識したものと考えられる。さらに、2021年のコンパクトMPV「ジョガー」は、ある程度自動車に関心がある人でも、一瞬ボルボと見間違うレベルである。そういえば、出張先でブレーキ灯の片方が切れたときがあった。あまりに田舎すぎて、周囲にすぐに電球が入手できるDIYセンターやカー用品店のようなものはなかった。宿の主に相談すると、村に1軒の修理工場を紹介してくれた。 工場に行くと、気のいい工場主は即座に交換を始めてくれた。筆者はクルマに乗ったままだった。代金5ユーロの支払いもクルマを降りる必要はなかった。まさにピットストップである。LEDのテールランプでは、こうはいくまい。高い視認性や耐久性、そしてデザインの自由度と引き換えに、自動車ユーザーはこうした気軽さを失っていくのかもしれない。Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、23年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー...
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