北海道を代表する老舗百貨店、丸井今井（札幌）でフランスのパリ駐在員も務めた田村誠次さん（６８）＝札幌市西区＝が、若い頃に憧れたジャズピアニストを目指し、札幌市内で演奏活動に力を入れている。４４歳で早期退職後に始めた事業はなかなか軌道に乗らず、思い悩んだ日々も。新型コロナウイルスの感染拡大という逆風にも見舞われた。苦境をバネに、第二の人生を切り開こうとしている。（くらし報道部デジタル委員
升田一憲）５月下旬の日曜日の夕方、札幌・ススキノの雑居ビル５階のバー。店内には十数人の客が入り、身動きが取れないほどだった。田村さんはピアノの前に座ると、昔懐かしい映画音楽「黒いオルフェ」や「ひまわり」などを次々と披露した。ほの暗い店内に軽快な演奏が響き渡った。参加者は時折、ワインやビールを傾け、じっくりと聞き入った。一曲を弾き終えるごとに温かい握手が送られた。演奏会を終えると、田村さんは「お客さんを前にこうしてライブを開けるなんて本当に幸せなこと。１日でも長く鍵盤に向き合いたい」と話した。田村さんがピアノを始めたのは６歳の時。クラシック音楽のファンである母親の勧めだった。ただ、田村さんは練習を毎日続けたものの、さほど身が入らず「もっと自由に過ごしたい」という気持ちの方が強かったという。しかし、１９６６年６月、小学６年の時、来日した英国の人気ロックバンド、ビートルズの斬新な音楽に衝撃を受けた。日本に滞在した５日間、当時のテレビはビートルズ一色だった。たちまちとりこになった。高校時代は、放課後になるとビートルズ談議に明け暮れ、仲間と一緒にピアノを弾いた。テレビやラジオでいいなと思う曲があ
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