個人的に見ると、2021年はR&Bがアルバムの価値を復活させた年だった。ティルザ(Tirzah)やジャズミン・サリヴァンのようなアーティストたちによる全体性の芸術的な追求や、彼女たちによって解き放たれた創造的な自由のなかに、特別で新鮮と言ってもいいような心地よさを見出したのである。
ブラックミュージックの伝統にルーツがあるからかもしれないが、R&Bはサウンドの動きや進化のあり方、ジャンル自体のスタイルの一新といったことへのためらいが強い。R&Bはアナログかつポストインターネット的であり、TikTokのようなソーシャルプラットフォームが現代のサウンドにどのような影響を与えているかといったことには無関心だ。そして、自らが築いてきた基礎の部分くらいにしか影響力は残っていないことに、自覚的であるように見える。あなたはこう思っているかもしれない。「でも、それはブラックミュージックやもっと広範な意味でのブラックカルチャーに対する自分の理解(それがどのように革新や創造をおこなってきたか、またさまざまなかたちでスキルフルに、ときとして危険なかたちで即興を重ねてきたか)とは真逆ではないか?」と。R&Bは“反未来”のジャンルだ。R&Bは未来を受け入れつつも、しっかりと過去に立脚している。内側へと目を向けているのだ。
個人的にはR&Bについて「根本の音楽」と考えたい。そうであるならば、このジャンルは土台のようなものとして機能する。R&Bという音楽は前進し、横断し、後退し、通り抜けていくが、決して急がない。近くに見えている未来に向けて、もしかするとそんなに急がなくてもいいのではないか──ということを、R&Bは思い出させてくれる。 ディストピアが迫っている。すでにそれが現実のものになってしまったと考えている者たちもいる。R&Bはわたしたちに、立ち止まって呼吸し、率直かつ本質に深く迫るような内省を通じて自己を見つめ直し、今後歩んでいくべき道を再検討したほうがいいのではないか、と問いかけているのだ。 当然ながら、外部の影響を受けたイノヴェイションと完全に無縁のジャンルなど存在しない(ドーン・リチャードやL’Rainの作品は、テクスチャーや柔らかなフューチャリズムを鋭く掘り下げている)。だが、今年のベストアルバムに共通しているのは(2作品を除いて)、そのDNA、背骨、大きく鼓動する心臓として、R&Bがひとつにより合わさっているという点だろう。
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