「金利を動かして経済・物価を安定化させる」のは、教科書的な「普通の金融政策」だ。3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利を解除し、政策金利をプラスにした日銀はやっと「普通の金融政策」に戻ったとも言える。
ただし、過去を振り返ると、日銀は「普通の金融政策」を運営した実績はほとんどない。金利規制がない自由な金融システムにおいて、独立した金融政策で経済・物価の安定化を図るのが「普通」だとすれば、ほとんど幻影に近いかもしれない。「普通の金融政策」を少し詳しく説明すると、金利規制の撤廃で金融が自由化された中、市場の資金を供給・吸収する公開市場操作(オペ)を通じた金利誘導を軸足にして経済・物価を安定化させる、というものだ。 この観点で近代の金融史を振り返ってみると、日本で金利規制が完全になくなったのは1994年の「普通預金の金利自由化」だった。一方、日銀の金融政策も長らく、市場金利よりも低い公定歩合で銀行に対して裁量的に貸し出す「窓口指導」が主力となったが、それが廃止されたのは1991年だった。
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