このほぼ1カ月前の10月26日には後任の大統領であった盧泰愚(ノ・テウ)も88歳で死去しており、度重なる80年代の元大統領の死去により、韓国では過去を振り返る論議が活発になっている。
そこにおける議論で印象的なのは、全斗煥への過酷とも思える反応である。例えば進歩派の代表紙であるハンギョレ新聞は、彼の死を「『虐殺者』全斗煥、反省なく死す」という表題で報じている。「元大統領」はもちろん、いかなる敬称も用いない異例の呼び捨ての報道だ。盧泰愚の死を「国家葬」で送ることを決めた大統領府は、全斗煥の葬儀には何の支援も行わないことを明確にした。韓国社会で大きな影響力を持つインターネット上では、その死を「祝う」書き込みが無数に並んでいる。 韓国社会の全斗煥の死に対する冷淡な反応の原因は、もちろん明確だ。1979年12月、朴正熙(パク・チョンヒ)暗殺後の混乱した状況で「粛軍クーデター」により軍の全権を握った全斗煥は、翌80年5月17日、再度のクーデターを行い、今度は政治的実権を掌握した。直後に発生した光州市民による民主化運動に対して行われた、軍の実戦部隊を投入した血なまぐさい弾圧は全斗煥と彼の政権に対する否定的なイメージの決定的な要因となった。例えば、全斗煥が死去する直前の11月11日、韓国の世論調査会社であるリアルメーターが、歴代大統領の好感度を調査した結果を公表している。この調査における全斗煥の好感度はわずか1.1%。この数字は最下位の盧泰愚の0.4%に次ぐ低いものだから、79年から80年におけるクーデターや民主化運動弾圧に関わった2人に対する評価がいかに低いかが分かる。
この結果は、光州事件から41年を経た今日の韓国社会に民主主義的な価値が根付いた結果なのだろうか。この調査において2位と3位を占めたのは、共に進歩派に属する盧武鉉(ノムヒョン)と文在寅(ムン・ジェイン)。その数字はそれぞれ24.0%と12.6%になっている。これらの数字を見れば、確かにそう見えなくもない。
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