認知症の患者数が2030年に推計523万人にのぼることが、厚生労働省研究班(代表者・二宮利治九州大教授)の調査でわかった。高齢者の14%を占める。22年時点の443万人から8年間で約80万人増える推計だ。高齢化の進展に伴い、50年には587万人、60年には645万人と増加傾向が続く。
認知症の予備軍とされる軽度認知障害(MCI)の患者数も30年に593万人、60年には632万人まで増えると推計した。MCIは認知症の手前の段階にあたり、認知機能のレベルが年相応よりも低下している状態を指す。この予備軍も含めると、認知症患者数は30年には1100万人を超す勢いだ。 厚労省研究班が福岡県久山町、石川県旧中島町(現七尾市)、愛媛県旧中山町(現伊予市)、島根県海士町の4地域に住む65歳以上の高齢者を調査した。調査対象のうち93%を医師などが判断し、認知症、予備軍、健常の3グループに分類。性別・年齢別の認知症などの割合を全国の性別・年齢別の人口にあてはめて患者数を推計した。認知症患者の割合は女性の方が高かった。90歳以上でみると女性は55.1%で、男性の36.6%を上回った。85〜89歳でも女性が37.2%で、男性の25.2%より高かった。二宮教授は女性の方が平均寿命が長いことに加えて、自宅で生活する女性高齢者が多く社会的なつながりが薄いことなどを要因として挙げている。
今回の調査結果は、2014年度調査で推計した2030年時点の認知症患者数744万人を3割下回った。両調査で、認知症と予備軍の合計には大きな変化はなかったが、内訳を見ると認知症が減り、予備軍が増えている。予備軍から認知症へ進行した人の割合が低下した可能性がある。二宮教授は「健康意識の高まりや喫煙率の低下などが背景にある」と分析する。
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