現代社会がもっと生きやすくなる、オルタナティブな感覚とは。文化人類学者・小川さやかインタビュー | 【GINZA】東京発信の最新ファッション&カルチャー情報 | INTERVIEW

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〈今読みたい過去の記事〉現代社会がもっと生きやすくなる、オルタナティブな感覚とは。文化人類学者・小川さやかさんにインタビュー。

日本では一度失敗すると、なかなかその評価を塗り替えられないんですよね。アフリカにいる時には、失言ひとつで評価が変わるのは不寛容だと理解されがちでした。人を追い詰めないような社会になっているんです。でも、そういう話をすると、その考え方は不安だという学生たちがいっぱいいます。それは、失敗をしたり、ネガティブな場合には何度もやり直せる評価のあり方はいいけど、すごく一生懸命やってきたこともリセットされるのは嫌だって。日本は「努力主義」ですからね。苦労して不幸な目にあって成功すると評価されやすいけど、ポッと出に見える成功者は理解されにくい。それはとっても不幸だと思うんですよね。欧米諸国では天賦の才のことを〝gifted〟といい、飛び級のシステムや特別コースがあって、必ずしも「努力すればみんなが同じ結果に至る」という前提がないんです。そのかわり、神から与えられた才能によって成功したのなら、それを分配しないのはおかしいと思われる。日本は、スタートがみんな一緒だと思っているんです。だから「自分の努力によって得た利益は自分のものだ、分配する必要はない」と考える傾向にあるように思います。わたしたちは〝分配

日本では一度失敗すると、なかなかその評価を塗り替えられないんですよね。アフリカにいる時には、失言ひとつで評価が変わるのは不寛容だと理解されがちでした。人を追い詰めないような社会になっているんです。でも、そういう話をすると、その考え方は不安だという学生たちがいっぱいいます。それは、失敗をしたり、ネガティブな場合には何度もやり直せる評価のあり方はいいけど、すごく一生懸命やってきたこともリセットされるのは嫌だって。日本は「努力主義」ですからね。苦労して不幸な目にあって成功すると評価されやすいけど、ポッと出に見える成功者は理解されにくい。それはとっても不幸だと思うんですよね。欧米諸国では天賦の才のことを〝gifted〟といい、飛び級のシステムや特別コースがあって、必ずしも「努力すればみんなが同じ結果に至る」という前提がないんです。そのかわり、神から与えられた才能によって成功したのなら、それを分配しないのはおかしいと思われる。日本は、スタートがみんな一緒だと思っているんです。だから「自分の努力によって得た利益は自分のものだ、分配する必要はない」と考える傾向にあるように思います。わたしたちは〝分配〟と〝再分配〟によって得た利益を社会に還元していますが、その2つはまったく意味が異なります。わたしが調査しているタンザニアの商人たちは「分配」の原理で動いています。たとえば、狩猟採集民社会では、今日狩りに成功した人が今日みんなにお肉を分けてあげる。明日成功した人は、明日みんなに分ける。でも、いつ誰が成功するかはそのときどきだから、人に助けられる日もあるし、自分が助けられるときになったら他人を助けてあげる日もある、という世界が「分配」です。つまり〝シェアリング〟ですね。それを国やリーダーが統制してやろうとすると「再分配」になるんです。傾斜配分で国が税金を徴収して、必要な人に必要な分を返す。自分自身がだれかを助けた感覚がなく、自分のお金が不当に分配された感覚が残ることがあります。もらった人も、くれた人に返す回路がない。直接自分で返せないから「義務」や「権利」の話になってしまう。でも「分配」だと義務や権利の話はもっと曖昧なものになります。そのシェアリングエコノミーって「市民社会」の論理なんですよ。無駄を減らして過剰消費や、環境破壊につながるような大量生産、大量廃棄の文化から抜け出し、不要なものや時間を必要とする人とシェアすることで、より効率的に経済をまわしていこうっていう話なんですね。無駄なものを有効に活用したいという欲求の方が強い。タンザニアの人たちは無駄だからシェアしてるわけじゃないんです。それに、そのためにはコミュニティに入れることが前提で。評価システムを利用して、同じ価値観や目的を共有していますよ、等価交換できる資産を持っていますよ、正しく信用を履行できますよ、という人たちを集める。そうじゃない人たちをシステムから排除することで成り立っている経済だと思うんですよね。たとえば、「職業:フリーター、貯金:0円、住所:不定、趣味:放浪」って登録フォームに書いたら、絶対に排除される。「シェア」という名前がついているけど、本当は「交換エコノミー」なんですよね。中国で活用の幅が広がっている「信用スコア」って知ってますか? どこに住んでいるか、どんな人と付き合いがあるか、また買い物履歴から嗜好やパターンを解析され、その人の履行能力によって個人の点数が付くんですね。さらに、自分の信用スコアを検索すると、関連するほかの人のスコアも出てくるんですよ。だから、誰が自分の足を引っ張っているかわかるし、ネットワークのなかで自分ひとり信用スコアが少ないと、見捨てられたりする。それこそまさに「積み重ね型人間関係」なんですよね。一度失敗したら終わりだから、努力してよいものを積み重ねていかなくてはいけないという世界観で。インターネットの可能性として広がっているシェアリングエコノミーとか、ブロックチェーンによるさまざまな便宜がどんどん広がったらいいなとは思うんですけど、評価システムが絶対にくっついてくるんですよね。「評価」というのが日常になり過ぎていて、数値で相手や物を選ぶシステムが、人間そのものに対する評価に置き換わっていく現象が進んでいて。

 

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