8月末の午後、厳しい残暑の都内。東京・港区の施設の会議室では男女3人が机を挟んで静かに座っている。手元にはぬいぐるみ。この会で使うトーキングスティックだ。これが回ってきたら順番に話をする。何度パスしてもいい。話さなくてもいい。ここでは好きな名前で呼ばれ、ファシリテーターと呼ばれる1人が話を回していく。3人とも出身地も仕事もバラバラだ。うち2人はこの日初めて会ったという。共通点はただひとつ。愛する人を自死により失ったということ。
「みんなが寝ている間のことでした。あれから14年経っているのに、未だにこれっていう理由、きっかけが分かりません。前夜も普通に会話をしていたんです。2人で月を見ながら、『月に触ると願いが叶うらしいよ』なんて話していたから、もしかしたら月を触りたかったのかもしれないと…今でも自死ではなかったかもしれないと思ったり…。生きていれば、この秋29歳になります」 自分の寿命が尽きるまでは生きると決めている。それは俊樹くんに約束したことだけど、俊樹くんのいない世界を生きるのは辛すぎる。世界は昨日と同じように続いているのに俊樹くんだけがいない世界。今も気持ちの整理はつかず、揺らいでいる。絶対に離れられない人、結婚するのはこの人だと決めていたという佐藤さん(仮)の恋人が自ら命を絶ったのは2018年8月のことだった。長い付き合いだった2人。お互い40代。自立し、それぞれの仕事を持ち、忙しい合間を縫ってLINEしたり、会ったりする日々だった。勤務医だった彼女はいつも患者のことを考えているような、優しく繊細な人柄だったという。その彼女の異変に「気付いて」いながら「気付かなかった」自分自身を、佐藤さんもまた許せないでいる。彼女はいくつもSOSを出していたのに、と。最後にLINEで連絡を取ってから4日後、佐藤さんが彼女の自宅マンションに駆け付けた時は既に亡くなっていた。家族ではないため、部屋に入ることはできなかった。ストレッチャーに乗せられ運び出される彼女。泣き崩れる自分。警察、消防。記憶は途切れ途切れだ。
後から思えば、何となく元気がなくなり、些細な事でイライラしたり、「私、疲れているのにお皿を洗ったよ」というようなことを、わざわざ佐藤さんに言うようになったりしていた。彼女はそんなこと言うような人ではないのに。仕事や人間関係の悩みも聞いてもいた。それでも何とかなるでしょ、と簡単に考えていたと言う。彼女の、独り言にも似た“おねだり”も、もう叶えてあげられない。
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