長崎県平戸市の福田酒造は、良質の水や豊かな自然に恵まれた平戸島で元禄元年(1688年)に創業した老舗だ。最近は酒米の栽培も手掛け始めて、原材料から出荷まで一貫した品質管理に力を入れている。丁寧な仕事で仕上げる銘酒は、海外の有名な日本酒コンクールや全国新酒鑑評会で高く評価されている。
戦国時代から江戸初期にかけてポルトガルやオランダなどとの貿易でにぎわった平戸は、南北に32キロ延びる大きな島だ。佐世保港(長崎県佐世保市)から小型船に揺られて約50分で島南部の前津吉港に到着する。さらに車で約10分走ったところに、福田酒造がある。平戸藩主から日本酒「福鶴」の製造許可を受けて以来、330年以上にわたって酒造業を営んできた。 2022年春、同社の「長崎美人 大吟醸」が世界最大級の酒類品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」の日本酒部門で金賞を獲得した。国内では日本酒の出来栄えを審査する全国新酒鑑評会で「福鶴・長崎美人」が21年から2年連続で金賞に選ばれた。同社は10年前、地元・平戸産の酒米を使い始めた。「山田錦」の栽培を市内の農家に委託するかたわら、自社でも生産に着手した。福田詮社長の長男、福田竜也専務は「近場で栽培することで、気候や環境の変化を敏感に感じることができる。この経験が酒の醸造にも生きる」と話す。醸造工程の改善は、今も続く。麹(こうじ)造りのやり方を見直したり、蒸し米に米麹を散布する「種切り」のタイミングを工夫したりしている。試行錯誤しながら雑味のない味わいを追求してきた。「長崎美人」について福田詮社長は「濃厚で辛口。口に含むと、味と香りを2度楽しんでいただける」と話す。「長崎美人 大吟醸」は720ミリリットルで3300円。「金選...
酒造りの道具やさまざまな関連品を展示する「福鶴じゃがたらお春博物館」を1996年に敷地内で開いた。長崎観光人気もあって、10年間くらいは観光バスでの団体客がしばしば訪れた。だが、アクセスの不便さに加えて新型コロナウイルス禍から最近は訪問者が減っている。平戸市南部は人口減少や高齢化も深刻だ。そんな逆風の中でも、「酒づくりは、心でつくり、風が育てる」という創業者・福田長治兵衛門の言葉を胸に、14代蔵主の福田社長は、後継者と共にチャレンジを続ける。
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