移動に次ぐ移動で、関係者は東京に着いたとき、「しばらく移動がなくなるだけでも、ホッとしているのでは」と気づかった。とはいえ、移動のストレスからは一時的に解放されても、「大谷フィーバー」の騒がしさから解放されるわけではない。
よみがえったのはちょうど4年前、2019年3月に行われたアスレチックス対マリナーズの大リーグ日本開幕戦での記憶だ。結果として2戦目が、イチロー（現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター）にとって現役最後の試合となったが、彼が試合前、ウオーミングアップのために三塁側のダッグアウトから出てきてゆっくりと左翼へ歩きだすだけで大きな歓声が沸き、その左翼からセンターへ駆け出すと、客席がどよめいた。あのとき、「こんな光景を今後、見ることがあるのだろうか」と鳥肌が立ったが、大谷がその記憶を遠い過去へと追いやり、上書きしている。WBCとシーズン開幕戦。舞台は違えど、2人がたどり着いたところは、野球選手が見られるであろう、究極の景色ではないだろうか。
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