左は村上隆『洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip』(2023〜2024年)。岩佐又兵衛の『洛中洛外図(舟木本)』を元に、画像のスキャンをAIで線描化し、それを再度、人の手で描き直すというプロセスにて制作されている。村上のキャラクターとともに、金雲の中にドクロがひしめくように描かれているのも見過ごせない。「村上隆 もののけ 京都」展示風景、京都市京セラ美術館 2024年 Photo: KOZO TAKAYAMA ©2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
村上の京都での初の大規模個展『村上隆 もののけ 京都』が、京都市京セラ美術館新館 東山キューブにて開催されている。会場では岩佐又兵衛の『洛中洛外図』(17世紀)を引用し、村上が描きおろした現代版「洛中洛外図」をはじめ、曾我蕭白(そがしょうはく)の『雲龍図』(18世紀)に挑んだ全⻑18メートルにおよぶ迫力満点の『雲⻯赤変図』、また「スーパーフラット」概念を体現するキャラクターDOBや、NFT(非代替性トークン)アートの考え方から生まれた絵画や立体など、最新のトレンドを含んだ約170点もの作品を公開。さらに十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行で話題となった祝幕の雅やかな原画も展示し、京都だけのオリジナルな「新・村上ワールド」を繰り広げている。
村上版「平安京」が出現!? と思わず圧倒されるのが、暗い八角形の室内に展開する『四神と六角螺旋堂』だ。東西南北を山や川に囲まれた京都は、東の鴨川を青龍、西の山陰道を白虎、南はかつての巨椋池を朱雀、北は船岡山や北山を玄武に見立て、各方面の四神に護られているとされてきた。そこで村上は、四神をモチーフとした巨大な絵画を東西南北の方角にあわせて展示し、中央には「京都のへそ」と呼ばれ、鐘楼が地震や大風といった異変を伝える機能を担った六角堂を題材とした『六角螺旋堂』を設置している。また黄金に染まる『竜頭 Gold』はドクロに象られているが、部屋の壁や床にも無数のドクロが描き込まれている。煌びやかな芸術文化で語られることが多いものの、実は複数の葬送地を抱え、いまよりも死が近かった中世の京都の気配を暗示していると言える。
左から村上隆『風神図』、『雷神図』 ともに2023〜24年 Photo:harold ©2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 左奥:村上隆『見返り、来迎図』 2016年 Perrotin 右:村上隆『金色の空の夏のお花畑』 2023〜2024年 photo:harold ©2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
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