<ツイッターの着信音と操作音が鳴りっぱなしの、型破りな映像スタイルが話題の映画「ゾラ」。見かけほど純真ではないステファニに気づいたときに視点の大転換が起こる>ジャニクサ・ブラボー監督の新作『ZOLA ゾラ』では、ひっきりなしにSNSの着信音や操作音が鳴り響く。主人公と同じくらいにヘビーなSNSユーザーなら、すぐにそれと分かる音だ。
この作品にもいろんな楽曲が使われているが、そのどれよりもスマホの操作音が作品の世界観を雄弁に物語る。こんな映画は初めてだ。実世界で大注目されたツイッターのスレッドが原作なのだが、まさにSNSの世界に迷い込んだような感じがする。 そう、「原作」は2015年に黒人女性ゾラ・キングが投稿した148本のスレッドで、知り合ったばかりの女性に誘われてフロリダへの旅に出た彼女が、セックスと暴力まみれの冒険に巻き込まれた一部始終をつづったものだ(ちなみに本人は「元祖スレッド屋」を自称している)。 この映画はゾラのツイートから伝わる活気や楽しさをうまく捉えている。だがブラボー監督と共同脚本家のジェレミー・O・ハリスは見逃さなかった。一連の出来事を追体験するのは確かにスリリングだが、生身のゾラは不快感や恐怖感も抱いていたはずだと。
ゾラ役のテイラー・ペイジも、その点をよく理解している。実際のツイートを読み上げるボイスオーバーの声は、誰かが誰かの噂話をする際に特有の、ちょっと事情通を気取った皮肉っぽい調子だ。一方で生身のゾラを演じるときの彼女は、自信に満ちていながらも自分の置かれた状況への不安と緊張を感じさせる。すると翌日、ステファニから旅に誘われ、戸惑いながらも一緒に行くことに。だがステファニには、ポン引きのX(コールマン・ドミンゴ)が付いており、この旅が悪夢の始まりになるのだった。ラッパーのバッド・ベイビー風のアクセントからヘアスタイル、長い付け爪に至るまで、ステファニは最初に登場した瞬間からグロテスクな雰囲気を放っているが、観客が「彼女は見掛けほど純真ではない」ことに気付くにつれ、さらにグロテスクさを増していく。
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ソース: Newsweek_JAPAN - 🏆 131. / 51 続きを読む »