【畑野理之の談々畑】巡り合わせがよかったのだと、振り返ってみれば、強くそう感じる。阪神のジェレミー・ビーズリーが6回を無失点。被安打3、奪三振7、与四球0で巨人打線を完璧に封じ込めた。前日23日は戸郷翔征にノーヒットノーランを食らったが、十分にやり返したと思う。「特別なことは言ってないです。普通に、いつも通り自分の投球をするようにと言っただけ」。屈辱や大記録など、余計なことを考えずに自分のことに集中してくれればいい。まだ今季2度目の先発、チームの敗戦を背負う立場でもない助っ人投手で、むしろよかったと期待し、それに応えてくれたとホッとしていた。
岡田彰布監督は同じくリーグ連覇を目指した2006年、9月16日の中日戦(ナゴヤドーム)でも山本昌にノーヒットノーランを喫した。この歴史的な敗戦で、その年はナゴヤドームで開幕から10連敗。翌日の同戦で先発したのが当時主力投手の一人だった安藤投手コーチだった。 「覚えていますよ。前日の試合は確か宿舎のテレビで見ていました。普通に、いつも通り準備をしましたが、今日は大事な試合、勝たないといけないなとやっぱり思いましたし、ボクは少し緊張してしまいました」。それでも7回2/3を無失点。朝倉健太と6回まで0―0の投手戦を演じ、2―0で勝利して、勝利投手にもなった。一日でチームの雰囲気を変え、そこから9連勝と勢いづく白星となった。被安打3、奪三振7はこの日のビーズリーと同じ数で、単なる偶然だとは思えない。06年当時も、そして今回も緊急ミーティングが開かれたわけではなく、岡田監督から選手に何かの言葉があったわけでもない。普通にやれ。1敗は1敗やんかということなのだろう。選手の時は力が入ってしまった安藤コーチも、投手コーチとなった今は、18年前を思い出し、選手を「普通に、いつも通り」送り出していた。
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