ただ、基調講演と同時に公開されたグラミー受賞アーティストのワイクリフ・ジョン、ソングライターのジャスティン・トランター、エレクトロ系ミュージシャンのマーク・レビレットが登場する、YouTubeのデモンストレーションムービーからMusic AI Sandboxのコンセプトを読み解くことができました。例えばワイクリフ・ジョンは、自身で演奏した楽器の音源をMusic AI Sandboxに取り込み「サンバ風のビート」を生成。コラージュ素材をAIでつくるワークフローが、「頭の中に描いているアイデアをより速く音楽作品に落とし込むために有効だった」とポジティブな評価を語っています。完成した楽曲『Right Here』もYouTubeに公開しています。
ジャスティン・トランターは、頭に浮かんだ言葉のインスピレーションを、ダイレクトに音楽のフレーズに変換するためのツールとしてMusic AI Sandboxを活用していました。ウェブアプリのテキストプロンプトに「1986年のParis Fashion Week(パリコレ)」という言葉を打ち込んで、生成された音楽をベースにしながら、さらに別のテキストプロンプトを追加しながら独特な雰囲気の音楽に仕上げるまでの過程がムービーに収録されています。音楽生成AIの開発はグーグル傘下のYouTubeも独自に力を入れる領域です。2023年冬にはGoogle DeepMindと一緒に試作した、いくつかの音楽生成AIが発表されています。そのひとつである「Dream...
ただ、今年のGoogle I/OではMusic AI Sandboxを開発する目的が、「クリエイターの支援」であることが明快に強調されていました。方向性の一端が示された格好です。先述のデモムービーに登場する一流ミュージシャンたちも一様に、グーグルの取り組みに対してポジティブな態度を表明しています。そして、彼らがMusic AI Sandboxを上手に活用しながらハイレベルな成果物を創り出したことが、生成AIに対して否定的なクリエイターにも大きな「インパクト」を与えるのではないかと、筆者は思います。 今年の春にはYouTubeの音楽部門グローバル責任者であるリオ・コーエン氏が来日し、日本の記者を集めて会見を実施しました。コーエン氏は会見の中で、YouTubeが音楽業界と密接に連携しながら、独自の音楽生成AIの開発に力を入れる方針を発表しています(
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