セックスワーカーとして働く人たちにとって、メキシコの労働者が普通に享受できる基本的な権利、諸手当、労働者保護などは一切存在しない。写真はメキシコ市で5月1日、セックスワーカーの社会的保護を求めて行進する「クラップ」のメンバー。提供写真(2024年 ロイター/ProDESC/handout via Thomson Reuters Foundation)
[メキシコ市 14日 トムソン・ロイター財団] - 人権活動家でもあるレーンさんは、この仕事を始めて14年になるが、いまだに社会保障制度の対象外で、住宅ローンなども利用できないと語る。セックスワーカーとして働くようになったのはコミュニケーション分野の学位を得るための学費が目的だった。新型コロナ禍と、その後の生活コスト危機以降、レーンさんはオンラインでのセックスワークに活路を見い出した。だが同業の仲間と同じように、連邦法はそうした職業に社会保障制度やその他の労働者としての権利を与えていない。 そこで5月7日、セックスワーカーたちは、この業界では初めての連携組織である「クラップ(CLaP!)」を結成した。目標として掲げるのは、セックスワークの非犯罪化と職業としての公式な認知、ネットとリアルで働くセックスワーカーに社会保障制度の利用を認めることだ。「(セックスワーカーは)他のどの労働者団体とも共通するニーズを抱える一方で、特有のリスク、そして際限なく続く暴力にも悩まされている」と語るのは、プロデスク(ProDESC)で人権・労働者権利のために活動するインディラ・ソリス氏。プロデスクは「クラップ」を支援している団体だ。「(クラップは)セックスワークは1つの生き方であり、個人の選択であって、そこから救い出してもらう必要などないと認識している」とレーンさんは語った。メキシコ市は2013年、セックスワークを「報酬を伴わない労働」として法的に位置付け、2019年に非犯罪化した。警察によるハラスメントや犯罪組織による暴力に対する30年間にわたる抗議の成果だった。メキシコ市でのセックスワークに関する最新の調査によると、セックスワーカーたちは、仕事の場がオンラインか街頭かにかかわらず、日常的に
「ある種の監視下で生きている。たとえばアパートを借りようとしても、入居を拒否されてしまう可能性があるから、セックスワークをしているとは口にできない」と語るイーライさんは、クラップの新会員獲得に協力している。 各国の政治家はこの2年間、「ギグワーカー(単発の仕事を請け負う労働者)」が社会保障を得られるよう多数の取り組みを推進してきた。ギグワークは、料理デリバリーからセックスワークまで、あらゆる領域で急成長しているセクターだ。デジタルプラットフォームで働く労働者への社会保障の提供は、次期メキシコ大統領の最有力候補とされるクラウディア・シェインバウム氏の選挙公約でもある。だが同氏の構想が視野に入れているのはドライバーや配送労働者だけで、セックスワーカーは置き去りにされている。「他の労働者たちが経験する暴力は、私たちの経験と変わらない。大きな違いは、他の労働者たちがやっていることが『仕事』かどうか、誰も疑問に思わないという点だ」とレーンさんは語った。
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