千葉県立中央博物館の栗田隆気研究員と琉球大学熱帯生物圏研究センターの戸田守准教授は、沖縄本島と周辺離島に生息するヤモリの仲間で絶滅危惧種のクロイワトカゲモドキのうち、本島北部と古宇利島に生息する個体群をDNAや形態形質から別種に分けられるとして「新種ヤンバルトカゲモドキ」と提唱する研究論文を発表した。2月27日に日本爬虫類両棲類学会が刊行する国際学術誌「Current Herpetology」に掲載された。
クロイワトカゲモドキは、昔は身近な生き物だったが、近年は開発や乱獲によって生息数が減少している。現在は環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類、種の保存法では採取や譲渡などが規制されている希少野生動物種。県の天然記念物にも指定されている。戸田准教授によると、新種と分類される以前と同様に規制の対象となる。 トカゲモドキ類はまぶたを持つことが特徴で、緑地帯や集落に近い畑などで見られる。国内では鹿児島・徳之島から沖縄本島と周辺離島に分布する2種5亜種が知られる。そのうち亜種となるクロイワトカゲモドキは、遺伝的に大きく異なる二つの個体群があり、名護市の北を境界に分布が分かれていた。ヤンバルトカゲモドキは、体の背面の中央部に縦帯が見られないことが多く、体の色と境界がぼやけるほか、うろこの密度などに特徴があった。2種がどのように分化したかは不明な点が多いという。戸田准教授は、北部に生息する個体群が新種と分類されたことで「分布域が狭まり、これまで以上に保全の必要性が高まった。生物多様性の理解を大きく前進させた」と研究の意義を語った。 (慶田城七瀬)
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