と言われても分からない人にはまったく分からないだろうが、今年2024年は1964年にスカイラインGT(S54A-1)が誕生して、そしてその活躍によって世にいうところの「スカイライン伝説」が萌芽(ほうが)してから60年という記念すべき年なのだ。と言われても、そもそも「スカイライン伝説」とは何ぞや?
反対に惨敗を喫したのがプリンス。1966年に日産に吸収合併される、スカイラインや「グロリア」を送り出したメーカーである。プリンスはツーリングカーレースに当時は5ナンバーフルサイズ車だった初代スカイラインを、スポーツカーレースにミケロッティデザインのボディーを持つ「スカイライン スポーツ」を送り込んだ。ドライバーは翌1964年以降トップドライバーとして脚光を浴びることになる生沢 徹と駐留米軍人のレイモンド・ジョーンズである。 それらに加えて、日本初のフォーミュラカーレースと並んでメインイベントと目されるGT-IIレースも制覇して一気に名誉を回復すべく、秘密兵器を準備していた。当時、プリンスの乗用車といえば前述したスカイラインとグロリアの2車種のみ、どちらも4ドアセダンしかなかったが、そのうちスカイラインを高度にスープアップしてGTに仕立てようというわけだ。
翌1965年にフルモデルチェンジしたボンネットトラックである「プリンス・スーパーマイラー」がクラス初となる4段+OD変速機の採用をセリングポイントのひとつにうたった。スーパーマイラーはコラムシフトだったのだが、このシフトパターンがスカイラインGT用オプションに似ているのだ。となれば、これまた本来コラムシフトとして設計されたものをベースにしていた可能性が強い。こんな成り立ちのスカイラインGTだったが、3月の発表時には必勝を期したGT-IIレースにライバルは見当たらず、優勝は確実と思われた。だがレースが近づくにつれて、不穏なうわさが流れ始めた。なんでも前年の1963年秋に発表されたばかりのポルシェの最新レーシングマシン「カレラGTS」(タイプ904)をトヨタの契約ドライバーでもあった式場壮吉が購入し、プライベーターとしてGT-IIレースに出場するらしい……というものである。
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