SEES分析(状況認識・事実説明・状況予測・戦略的警告)の手法は、国家の問題以外にも使える。本質的には、私たちの思考にある合理性に訴えかけるものだからだ。
筋道を立てて理性を働かせれば、受け入れがたい選択肢しかなくても、より堅実なものを選ぶことができる。それには「知っていること」「知らないこと」「おそらくそうだと思うこと」を区別することも含まれる。そうした思考は難しく、整合性を必要とする。世界は予測可能だと思わせてくれるような古い考え方に執着すれば、危険が大きくなっていることに気づかず、そのせいで不意をつかれる。何も知らなければ、損害は大きくなる。1982年3月、運命の日。マーガレット・サッチャー英首相は、情報報告書が何を伝えているかを即座に把握した。アルゼンチンの軍事政権がおそらくたくらんでいること、それが自分の政権に与える影響をすぐに理解したのだ。次の言葉が、その知見を活かすことができる彼女の能力を示している。私はホワイトハウスを含めて、米当局に英政府通信本部(GCHQ)の最新情報を伝える役割を任じられた。英首相官邸には、レーガン大統領にガルチェリと話をして、戦闘はもちろん、上陸部隊を送り込むことがないよう確約をとってほしいことを伝え、さらにイギリスはいかなる侵略も認めないことを警告するサッチャー首相からガルチェリ宛ての私信を大急ぎで
運命の日から2日後の1982年4月2日、アルゼンチン軍がフォークランド諸島に侵攻した。当時、同地域にはイギリス海軍の小規模な分遣隊と軽武装の氷海警備艦が活動しているだけだった。そのため、アルゼンチン軍に対抗するのは、実質的に不可能だった。イギリス海軍の後続部隊が4月2日のうちに来られる距離でもないし、唯一の空港は、長距離部隊輸送機を受け入れるには滑走路が短すぎた。 アルゼンチンが何を狙っているかという「状況認識」をするための的確な情報がなかったし、わかったことの意味が理解できず「事実説明」もできない。さらに事態の展開も「状況予測」できなかった。さらにこうした事態が起こるという「戦略的警告」を長年にわたって発せずにいたため、アルゼンチンの侵略を阻止するための対策を講じていなかった。
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ソース: dol_editors - 🏆 78. / 53 続きを読む »