「SF的リアリズム」が気候危機の時代に果たす役割:陳楸帆──特集「THE WORLD IN 2023」

  • 📰 wired_jp
  • ⏱ Reading Time:
  • 33 sec. here
  • 2 min. at publisher
  • 📊 Quality Score:
  • News: 17%
  • Publisher: 53%

日本 見出し ニュース

日本 最新ニュース,日本 見出し

「SF的リアリズム」が気候危機の時代に果たす役割:陳楸帆──特集「THE WORLD IN 2023」 最新記事

いまわたしたちが直面する課題は地球規模のものなので、団結して行動を起こす必要がある。その際、SFというメディアのもつ可能性は、分け隔てられた国家や政府、宗教的派閥、異なる文化や言語の間を描き、あるいは、死や神々、植物、動物など、あらゆる異なる次元からのメッセージを「インターフェース」としてつなぐことで、未来を現実としてかたちづくれることにある。つまり科学的知識や理論の点と点をつなぎ、いまはまだ存在しない“ソリューション”を想像してみせることで、多くの人が理解しやすいかたちにその「未来」を翻訳できるのだ。かつてのわたしの作品には暴力的な描写や暗いシーンが多くあったが、いま求められているのは「楽観的な未来」を描くことだと思っている。パンデミックや戦争、気候変動などによって世界は最悪で、「未来には希望がある」という感覚はもはや希少で得がたいものになっている。気候危機を現実のものとして経験するのは、いまの子どもや若者が中心になるはずで、未来を生きる人々が希望をもてるようにしなければならない。

わたしたちにいまできるのは、若者たちの背中を踏みつけて「よし受け入れろ、これがお前の運命だ」と言い聞かせるか、あるいは彼/彼女らがこのクソみたいな世界に反撃して乗っ取る手助けをするかのどちらかなのだ。こうした考え方をわたしに教えてくれたのは、『新世紀エヴァンゲリオン』などの日本のアニメ作品だった。登場人物たちはシステムに対抗するように人々に呼びかけ、現実に抗って闘うが、それは、いまあらゆる場所で実際に起こっていることなのだ。 未来には希望があることを伝えるために、いまは新作『NET ZERO CHINA』を書いている。主人公の男が2060年にタイムスリップして、習近平主席のネット・ゼロ政策が実現した中国を体験する物語だ。また『未来はひとつではない

SFというメディアは「未来はひとつではない」という可能性を示してくれる。現在の世界も、実際は社会、歴史、文化、教育システムなどあらゆる面で多様性に満ちている。だからSF作家は、それぞれの地域に根差して暮らす人々にとって信頼できる観点やニュアンスから物語をデザインする必要がある。わたしが想像するに、中国のSFは数千年前の伝統に再接続されなくてはならない。例えば、非暴力主義を掲げる道教(Taoism)には、「陰か陽か」「白か黒か」ではなく、「完全に分離しながらも絡み合っている」といった量子物理学的な思想が書かれている。これこそが、あらゆる二項対立を超えてわたしたちを次のレべルの文明へと導く考え方ではないかと思うのだ。

 

コメントありがとうございます。コメントは審査後に公開されます。
このニュースをすぐに読めるように要約しました。ニュースに興味がある場合は、ここで全文を読むことができます。 続きを読む:

 /  🏆 73. in JP

日本 最新ニュース, 日本 見出し