小林社長は「今回の件が社会問題にまで発展し深くおわび申し上げる」と謝罪した。サプリとの関連が疑われる新たな1人の死亡が確認され、計5人と拡大した。対応の遅れが指摘される中での2回目の会見だったが、「情報開示」は後手に回った。被害の拡大に終わりが見えない「紅麹(こうじ)問題」。台湾など海外メディアも集まった会見冒頭、小林社長ら幹部が約10秒間、深々と頭を下げた。「多くのみなさまに心痛、不安をおかけしている。深刻な社会問題まで発展していることを深くおわびします」。4時間半に及ぶ会見で、小林社長は下を向き、涙ぐむようなシーンもあった。
会見では28日午後10時時点で健康相談などが約1万5000件に上っていることを明かした。「返品したい」「早く補償してほしい」「他の商品は大丈夫なのか」と言った声も寄せられている。サプリとの関連死が疑われる5人は70~90代の男女が含まれ、体調不良を訴えて通院したり、通院を希望したりしている人が合わせて約800人いると明らかにした。小林製薬が通院費用などを補償する。 リスク対応の軽視に批判が噴出している。サプリ摂取者の腎疾患の症例が最初に報告されたのは1月15日だが、公表は3月22日。対応が後手に回り、その間に亡くなった人もいた。情報公開、製品回収の遅れについて小林社長は「原因物質の特定をとにかく急ぎ、分析に取り組んでもらっていた。当社のガイドライン、社外の弁護士など外部のアドバイスも聞きながら判断していた」と釈明し、「最善の判断をしたつもりだが、力が足りないと言われればおっしゃる通り」と謝罪した。
会見の途中には厚生労働省の発表があった。小林製薬が健康被害のあった「紅こうじ」製品を解析した結果、想定していない物質が見つかり、「プベルル酸」が検出されたとする内容だった。会見では原因物質について「まだ解明できていない」と繰り返していたが、報道陣の指摘に初めて「プベルル酸」を報告していたことを認めた。ここでも情報開示が後手になった。小林社長が事態を把握してからも1カ月半の間、情報公開が遅れた。亡くなる人が出たことに6代目社長は「想定はしていなかった…」と唇をかんだ。【松浦隆司】
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