<性的虐待の記憶はなぜ被害者を苦しめ続けるのか――トラウマ回復の鍵はつらい体験と向き合うことだ>
マリアはきちんとした身なりで診察室に入ってきた。バッグは高級なブランド品、爪には鮮やかなコーラルのマニキュア、マスカラとアイライナーも完璧だ。でも彼女の顔はこわばり、ほとんど表情がなく、怯えたような目をしていた。眠れなくて、すごく不安なんです。マリアはそう訴えた。20代の頃にも不安の症状があったが、カウンセリングが効いたようで、それからは問題がなくなったように思えた。そして新しい仕事に就き、結婚し、子供をもうけた。「葬儀が終わって」とマリアは言った。「自分の車に戻り、運転席に座ったら奇妙なことが起きたんです。震えが止まらなくて、心臓がドキドキし、息ができず、窒息しそうで。初めてのことで、15分ほどは動けなかった。これって過去の虐待と関係があるのでしょうか?」
1週間後、マリアが再び訪れたとき、私は彼女の外見の変化に驚いた。染みの付いたTシャツ姿で、髪は無造作に結んであった。話し方はぎこちなく、内容は脈絡がない。次々とよみがえる性的虐待のつらい記憶に、彼女は溺れていた。公園への散歩や家族の誕生会、感謝祭のディナーやお泊まり会。どれもがおじの暴力で汚されていた。「自分じゃコントロールできない。思い出が勝手にやって来る。頭がおかしくなりそう!」「お願い、触らないで」。怯えた声でそうつぶやいたかと思うと、今度は怒りだし、泣きながら叫ぶ。「だめ、だめ、そんなことしないで!」性的な暴力は今の社会にはびこっているが、その大半は明るみに出ない。 セクハラ告発の #MeToo 運動が起き、ウェイド・ロブソンとジェームズ・セーフチャックがドキュメンタリー映画『ネバーランドにさよならを』で幼時にマイケル・ジャクソンから受けた性的虐待を告発し、クリスティーン・フォードが最高裁判事ブレット・キャバノーから高校生の頃に受けた性的暴行を議会で告発する時代になっても、状況は変わっていない。だから被害者の説明は矛盾や食い違い、欠落だらけになる。話の信憑性に対する疑惑が、新たなセクハラや虐待、暴行のサイクルを継続させる。
辛い経験だけ忘れることができる薬が出来ればいいのに。💦
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