<おもちゃもドローンも、バイブレーターも――。スマート家電・スマート機器は世界に約266億台存在するが、企業はユーザーを守るためにはほとんど何もしていない。本誌「危ないIoT」特集より>
2009年、Wi-Fi機能を搭載したサーモスタットや玄関カメラなど、「モノのインターネット(IoT)」関連の機器が普及し始めた頃、コンピューター科学者のアン・ツォイは、実世界で用いられている機器の中に「あっさり侵入できる」ものがどれくらいあるか調べてみた。 具体的には、ユーザー名とパスワードが工場出荷時のまま変更されていない機器をウェブ上で探した。出荷時のユーザー名とパスワードはマニュアルに記されているものがほとんどなので、プログラムを作ってウェブ上で検索すれば、侵入可能な機器を簡単に洗い出せる。 そのような製品は、144カ国で50万台以上見つかった。ツォイはこの結果を基に、インターネットにつながっている機器全体の約13%は、いわば玄関に鍵が掛かっていない家のような状態にあるという推計を導き出した。
それから10年。ハッキングを受けやすい機器の数は劇的に増えた。その背景には、家電などさまざまな製品に小型のコンピューターが組み込まれるようになり、周囲の世界とワイヤレスでコミュニケーションできるようになったという事情がある。そうした機器は「スマート家電」「スマート機器」などと呼ばれる。
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