開成中学・高校から東京大学法学部を卒業、ゴールドマン・サックス証券で30歳にして最年少のゼネラルパートナー(共同経営者)、マネックス証券を設立1年で上場――。
エリートの王道を歩むマネックスグループ社長CEOの松本大氏は、東京証券取引所や新生銀行などの取締役を歴任し、金融界の重鎮としての地位を上り詰めていった。だがマネックス証券はライバルの楽天証券、SBI証券に大きく水をあけられ、松本氏は2013年にマネックスグループの取締役会長に退いた。17年10月、松本氏は「第二創業」を標榜してマネックス証券の社長に復帰。同年12月、マネックスクリプトバンクを設立し、仮想通貨に参入した。 ライバルのSBIホールディングスは16年から仮想通貨事業に進出しており、後れを取っていた。そこに転がり込んできたのが、コインチェックのNEM流出事件である。松本氏はコインチェックを買収後、経営陣に東大法学部の後輩を送り込み、コインチェックは国内シェア1位を維持している。
松本氏にとってリベンジの総仕上げが、コインチェックの米ナスダック上場だ。マネックスは今年3月、特別買収目的会社(SPAC)を使い、22年中にコインチェックを約2100億円で上場する計画を公表。5年の短期間で、企業価値を50倍までバリューアップしてのイグジットは、金融エリートにふさわしい快挙といえた。しかし、イグジット一歩手前で状況は大きく悪化した。仮想通貨の相場が冷え込み、コインチェックの業績は6月以降、赤字体質に。さらに11月、米仮想通貨FTXトレーディングの破綻という“大波”がマネックスを襲う。
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