せっかく決まった再就職先を、早期に後にする人は少なくない。退職自衛官の再就職をサポートする自衛隊援護協会関係者によると、自衛隊がデータを取っている再就職後半年以内の離職率は約10%。つまり、10人に1人は再就職から半年も経たないうちに、再就職先を離れるという。取材した中には、「自分の知っている限りで言うと、半年のうちに3分の1ほど退職し、2年以内に70%ぐらいは退職している」と話す人もいた。大卒新入社員の、入社3年以内の離職率は3割程度だと言われているが、自衛隊を定年退官した自衛官もそれと似たような数字となっている。
また、一般的な民間の転職では、自分自身のスキルや経験を棚卸ししたうえで転職を行うわけであり、それでも離職者は決して少なくないのだから、「これまで命令にはすべて『はい』と答えてきた。援護担当者に紹介された仕事についても『はい』と言う」といった姿勢のままだと、民間企業ではしんどいかもしれないとも思う。■給与が少なく離職するケース遠山氏は、再就職に際し損保会社を希望したものの、タイミングが合わずやむなく警備会社に就職を決めた。ただ、就職時には無線関連の業務を任せてもらえると聞いていたところ、入社後に求められたのは警備員としての業務だった。 当初は「いまは無線関連の仕事の枠がないため、一時的にお願いしたい」と頼まれたため仕方なく応じたものの、その後、実は当面無線関連の仕事の空きが出ないことを知った。会社からは再度「そのまま警備員をやってほしい」と頼まれたものの、「話が違う」と退職の道を選んだ。ところがある日、ふと家計を見直したところ、退職金や若年退職者給付金がどんどん減っていることに気がついた。このまま減り続けたらどうなるだろう」。危機感を抱いた遠山氏はファイナンシャルプランナーのもとを訪れ、収支に関するシミュレーションを実施。その結果、数年で貯金が枯渇することが判明した。当時の給料は手取りで20万円。これまで特に贅沢をしてきたつもりはなかったため、「お金がなくなるかもしれない」とは考えたこともなかった。しかし専業主婦の妻、大学生となり一人暮らしを始める娘、障害を抱えた息子……。この給料で家族を支えることは難しかった。車の維持費すら頭が痛くなるが、地方の生活に車は欠かせない。ファイナンシャルプランナーからは、「収入を上げることが望ましい」と指摘を受けた。そこで、やむなく恵まれた職場を離れ、完全歩合制のタクシー運転手に転職を
退官してからはじめて気づきましたが、私は700万円程度の給与をもらうことで、『自分はそれだけの価値がある人間だ』と無意識のうちに思っていたのだと思います。それがガクンと下がったことで、『これだけ頑張っても、自分の価値はこんなものなのか……』と非常にショックを受けました」
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