実は私、この「タテ」施策と「ヨコ」施策、それぞれの適用分野をしっかり分けて考えるべきと思っています。「ヨコ」は、「労働者が潤沢にいて、分業が可能」な分野に、「タテ」は逆で、「労働者が希少で、低生産性企業が余っている」分野に、適用すべきでしょう。一方、高卒者は30年で5分の1まで減少、専門・短卒者も激減しています。近年では出産退職→専業主婦となる女性が減ったため、主婦パート人材も減少しています。加えて、高齢者雇用の主柱となる前期高齢者まで激減を始めました。非大卒・主婦・高齢者が活躍している非正規領域は、もう絶望的な人手不足となっています。
こうした全体像を見渡せば、「分業で余裕を持たせるヨコ施策」はホワイトカラーに、「企業淘汰で賃金アップを目指すタテ施策」は非正規領域に、分けて適用すべきとわかるでしょう。後者については、最低賃金の引上げが続き、現実はまさにその通りに進んでいます。足して、前者の「ホワイトカラーの分業」という改革は、日本人にはなじみがないのですが、こちらはいかがでしょうか。欧米ではホワイトカラーでも、パートタイム労働は珍しくありません。パートタイムを、非正規と考えている日本のほうが、逆に特殊です。他国は正社員にも非正規労働者にもそれぞれ短時間労働者がいます。例えば、パートタイム労働者の割合が高くその活用が進んでいるオランダを、私は、パートタイム社会オランダと呼んできましたが、管理職も含め、短時間労働の正社員が多い国です。また、労働者の希望に応じて、労働時間や就労場所を変更することが可能になっています。日本でも、すでに、正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差を解消する、いわゆる「同一労働同一賃金」が法制化され、有期雇用の5年経過後無期転換ルールなども定められており、パート労働をより良好な雇用機会にしようという動
日本では、今も長時間労働が広がっていますので、まずは残業なしの働き方が標準となることが大切だと考えています。加えて、これからは、育児や介護といった特別な理由がなくても、短時間勤務に切り替えることができるようにすることも大切です。労働時間選択の自由度が高まると、お互い様の気持ちも高まり、様々な事情を抱えながらも働きやすくなるのではないかと思います。毎日長時間へとへとになるまで働き1000万円の年収をもらうより、正社員だけど労働時間を2〜3割減らして生活に余裕を持たせ、600万円もらうという選択肢は、けっこう人気になるでしょう。採用戦略として、こちらの方向に舵を切る企業がそろそろ出てきていい頃ですね。それを後押しするよう、短時間正社員向けの、優遇税制や社会保障軽減など、何か誘導策が打てないでしょうか。
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