【ワシントン=長沼亜紀】米労働省が28日発表した2021年10～12月期の雇用コスト指数は、季節調整済みの前期比で1.0%上昇した。労働市場の逼迫で、人件費の上昇圧力が高まっている。前年同期比では4.0%上昇し、01年10～12期以来20年ぶりの伸びとなった。民間企業の上昇率は4.4%で過去最高となった。州・自治体はプラス2.6%だった。雇用コストの約7割を占める賃金・給与は前期比1.1%の伸びで、前期から0.4ポイント鈍化した。約3割を占める福利厚生は0.9%の上昇で、前期と変わらなかった。労働需要は強い半面、新型コロナウイルス禍で労働市場から退出した人がなかなか復帰しないため、深刻な労働力不足が続いている。有利な条件を求めて転職する人も増えており、企業は人材の採用や引き留めのために賃金や福利厚生を引き上げる必要に迫られている。
前年同期比の雇用コストの伸びは、レジャー・ホスピタリティー（8.0%）、小売り（6.3%）、ヘルスケア（4.6%）など対面サービスを提供する低賃金の業種で目立った。専門・ビジネスサービス（3.9%）などでも強く、幅広い業種で賃金の上昇が広がっている。 需給の不均衡や物流の混乱に雇用コストの上昇が加わり、物価は急上昇している。21年12月の個人消費支出（PCE）物価指数は前年同月比5.8%上昇し、約39年半ぶりの高水準となった。米連邦準備理事会（FRB）は供給制約は徐々に和らぐと見込む一方、労働不足による賃金上昇でインフレ圧力が持続することを警戒している。 経済調査会社パンセオン・マクロエコノミックスの主任エコノミスト、イアン・シェファードソン氏は、前期比の雇用コストの伸びが鈍化したことを踏まえ「急速な金融引き締めをしなければならないというFRBへの当面の圧力は緩まった」との見方を示した。
一方、ウェルズ・ファーゴ証券の上級エコノミスト、サラ・ハウス氏は「すでに労働市場が逼迫しているところにオミクロン型の感染急増で労働供給の見通しが下がった。雇用コスト上昇のピークが過ぎたとみるのは早すぎる」と指摘した。
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