スーパーから一歩出ると待ってましたとばかり荷物を車まで運んでくれる方、エレベーターに乗れば、声に出さずとも一番降りやすい場所をさっと開けてくださる方々。心から溢れ出る「大丈夫ですか?」の大合唱が聞こえてくる。さて杖である。術後すぐの入学式では、見るも危なっかしい杖歩行を披露したけれども、今ではすっかり慣れ、左股関節に入っている人工関節の主張も徐々に穏やかになりつつある。おそらく手放す日も近い。
加えて発見あり。威力抜群の杖のおかげで「こんな所に段差があると身体の不自由な方は困るなあ」などと実感できる。「誰にも優しい」環境整備は日本できっとこれから飛躍的に伸びる分野だなとか、これまで気づかずに通り過ぎてきた物事が鮮やかに眼前に立ち上がる。杖一振りで、恒久平和や籠一杯のドーナツや永遠の若さが得られるかも、と想像しただけでわくわくもできる。感謝とともに今の幸せに浸りたい。実のところ杖を手放すその日が来るのを怖がる私がいるのだが。琉美インターナショナルビューティカレッジ校長。1962年5月、山口県生まれ。32年間、沖縄県立学校に勤務し、糸満高校、南風原高校、名護高校で校長を歴任。2023年3月名護高校を退職。同年4月から現職。県教育委員会委員。趣味は読書、ガーデニング。
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