動きが速かったのは野党側の方だった。立憲民主、国民民主両党は、4月中下旬にそれぞれ鈴木氏の推薦を決定した。立民は「全勝した衆院3補選の第2ラウンド」(幹部)と位置づけ、党を挙げて必勝態勢を組む構えを見せる。
これに対し、自民の静岡県連は4月23日に「政策面で評価できる」として大村氏の推薦を党本部に上申したが、県連幹部と面会した茂木幹事長は「よく相談しながら考えていきたい」と述べるにとどめた。野党が推薦する鈴木氏は県内の保守層にも一定の支持基盤があるとされ、自民内には「不利な戦いになる」との見方があるためだ。 補選後の地方選が持つ意味は小さくない。菅前首相は、2021年4月の衆参補選と参院広島再選挙で不戦敗を含めて全敗後、同年8月に菅氏の地元である横浜市長選で敗れたことが、求心力低下の決定打となった。静岡は岸田首相の地元ではないとはいえ、負ければ政権運営が一層厳しくなるのは必至だ。 公明党は4月30日に自主投票を決定しており、自民が大村氏を推薦したとしても、与党が一致した対応を取れるわけではない。自民執行部の一人は「本当は『オール静岡』が一番いい」として、鈴木氏に相乗りしたい本音を口にするが、県連の上申を無視するのは難しいとみられる。党内では、党本部の推薦を見送ったうえで、県連推薦にとどめる案が出ている。
自民では、安倍派座長を務めた塩谷立・元文部科学相(比例東海)が派閥の政治資金規正法違反事件を巡って離党したほか、宮沢博行・前防衛副大臣(同)が女性問題で離党し議員辞職するなど、静岡を地盤とする議員の不祥事が相次いでいる。党内では「かえって足手まといになりかねない自民推薦が本当に必要なのか」との声も漏れている。
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