れ親しんだ中盤に入り、試合は引き分け。チームは6位で欧州リーグ出場圏を獲得した。5月末に都内で引退会見を行い、日本のファンに別れを告げる。
整え続けてきた心が、ふいに乱れた瞬間だった。後半ATにピッチに立ち、現役最後となる試合終了のホイッスルを聞くと、長谷部は笑顔で同僚と抱き合った。その直後。幼い娘と息子が駆け寄ってきた。一気に感情があふれた。涙を浮かべ、大切な宝物をぎゅっと抱きしめた。ドイツで計17季プレーし、自ら引き際を決めることができるレジェンドになった。「自分自身が誇りに思えることは、最後までやるべきことをやってきたこと」。この日はボールに触ることはできなかったが、最後までチームの一員としての役割を全うした。 08年に浦和からドイツに渡り、日本人が数多く同国でプレーする礎を築いた。リーグ優勝、ドイツ杯、欧州リーグとタイトルも獲得。日本で知られる代表主将としてだけではなく、サッカーが文化として強く根付くドイツで、真のプロフェッショナルとして認められた。この日もスタンドには数多く背番号20のユニホームが掲げられ、ファンが別れを惜しんだ。
引退後は、フランクフルトU―19のコーチとして指導者の道がスタートする。「サッカーを通し、一人の人間として成長させてもらった。これからの人生に生かしていきたい」。日本サッカー界が生んだ偉大なキャプテンは、そのキャリアにふさわしい形で現役生活を終え、第二の人生へと踏み出す。「変な意味じゃないですけど、きょうが特別なものだとは思っていなかった。おそらく、あまり悔いとか後悔がないのかな。こうして健康な体でやめられるし。自分でも大丈夫かと思うくらい、淡々としている」「どうですかね?...
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