「競合より高い水準を提示して採用競争に打ち勝つためだ。実は新卒採用では募集人員をなかなか満たせず苦労している。確かに新型コロナウイルス禍の影響を受けて大規模修繕やリフォーム工事が一時落ち込んだが、足元ではV字回復した。初任給の引き上げは将来的な発展のための先行投資となる」
「若者を建設業界に呼び寄せるには、現場で働く労働者のステータスを向上しなければならない。例えば、国や日本建設業連合会(日建連)などが推進する『建設キャリアアップシステム(CCUS)』を活用して技能に応じた待遇を得られる環境をつくることなどだ。加えて(週休2日に相当する)4週8閉所の徹底による休日確保も重要となる」「長谷工グループは『つくってきたからわかるんだ』と自社が手掛けたマンションとグループ社員たちを登場させるテレビコマーシャル(CM)を長年放映してきた。少し前、このCMに現場で働く職人たちを登場させる映像を制作した。主力の下請け会社約300社からなる組織『建栄会』の一社から『我々も出演できないですか?』との声を受けて着手した」
「こうした信頼関係づくりの一環で、ともに改善案をつくる仕組みがある。長年、効率化のアイデアを拾い上げて反映する『HASEKOバリューアップ活動』に取り組んでいる。手間はかかるが生産性が高まる。生み出されたメリットは分け合うことで協力会社にも行き渡る。これらが職人の賃金にも反映されるよう取り組みたい」「労働時間の制約については人工知能(AI)を活用した自動設計や、建築部材メーカーと協力したサプライチェーン(供給網)の効率化などで対策を打っている。これらは建築部材の情報を3次元モデルとひも付ける『BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)』が土台だ。これまでに施工現場の生産性を1割高めた。25年3月期までにこの上げ幅を2割まで高め、コスト削減にもつなげる」