国際宇宙ステーションでの船外活動のとき、ステーションの最先端まで移動した野口さんは、想像を絶する世界に直面した。手すりが途絶え、その先は構造物が何もない、真っ暗な闇。光の返ってこない世界と向き合って、恐怖感を覚えたという。さらに、船外活動のパートナーの手袋に傷が付くというトラブルが発生、緊急事態に身構えたときもあった。そのとき支えになったのは、そのような事態を見越した〝訓練〟だった。
NASAでは、宇宙飛行士を養成するため、過酷な訓練を実施する。200科目以上の授業、実際に手足を動かすシミュレーター訓練、さらにジェット機の飛行訓練など。飛行訓練では、騒音で聞き取りにくい無線の会話に付いていけず苦労をしたという。「基本的にNASAの訓練は、単一のストレスがかからない工夫がされています。次の日には違う種類の訓練が用意されているので、たとえ今日の訓練で失敗しても、引きずらなければ、明日の訓練に前向きに取り組めます。宇宙飛行士になるには、精神的にも肉体的にもギリギリのところまで頑張るような作業が続くので、失敗するたびに落ち込んでいてはきりがない。プレッシャーや試練自体は、悪いことではありません。それを乗り越えることで、人間は成長するからです。ただし、それらが継続するとメンタルに悪影響を及ぼしてしまう。そうならないためには、禅問答のようですが、ストレスを断ち切るしかありません。気持ちを切り替えることが大切で、そのためには、気分を切り替えるルーティンをつくっておくのもいい。お酒を飲みにいってもいいし、ジムで運動してもいいし、歌を歌うのでもいい。要するに強制的にリセットするパター
周到な準備と気持ちの切り替えが、さまざまな困難を乗り越えさせてくれる。宇宙と地上ではリスクの差は比べ物にならないが、ストレスに耐えプレッシャーに強くなる方法に違いはない。失敗しても負の感情を蓄積せず、自分のパフォーマンスを発揮できる次の機会を大事にすることが大切だ、と野口さんはアドバイスする。
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ソース: dol_editors - 🏆 78. / 53 続きを読む »