ジョブ型人事制度や職務給への関心が高い。パーソル総合研究所の調査(※1)ではジョブ型導入企業が18.0%であり、導入検討企業の39.6%と合わせて57.6%がジョブ型導入済・導入検討企業だ。日本能率協会の調査(※2)でも、ジョブ型の人事・評価・処遇制度を何らかの形で導入している企業が2割以上で、導入検討中の企業は4割台、合計すると6割を超える。ジョブ型の導入目的(複数回答)としては、パーソル総合研究所の調査では「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」が65.7%と最多で、「戦略的な人材ポジションの採用力を強化したい」(55.9%)、「従業員のスキル・能力の専門性を高めたい」(52.1%)がそれに続く。
同じく、日本能率協会の調査では「役割・職務・成果を明確にし、それらに応じた処遇を実現するため」が74.6%と最も多く、「専門性の高い人材を育成・活用するため」「社員のキャリア自律意識を高めるため」が4割前後でそれに続く。 2つの調査結果はほぼ同様で、仕事に応じた処遇を行い「人件費の合理性」を高めることをジョブ型の導入目的とする企業が多いということだ。そして、導入目的のもう一つの柱が戦略的人材の採用強化、専門的人材の育成・活用などの「タレントマネジメント」の推進である。能力主義人事制度の場合、特に、管理職層についてはゆがみが大きく、同一等級であればライン管理職も専門職も「そのどちらでもない人」も似たような基本給を支給されることになりがちで、職責や役割の重さと給与処遇の不整合を看過できなくなっている。ジョブ型や職務給が注目される背景にあるものは、人件費の合理性だけではない。ある面、それ以上に重要だと思われるものが、適所適材の採用・リテンション・配置など、すなわち「タレントマネジメント」上のニーズだ。これまで日本の給与相場は業種や企業規模、年齢による違いに比べて職種による差はさほど大きくなかったが、IT系など採用需給がタイトないくつかの職種では、他職種より高めの職種別給与相場が形成されつつある。
そのような職種では、自社の標準的な給与水準では採用できず、リテンションもできない。また、多くの企業が経営環境の変化に対応すべく事業戦略やビジネスモデルの再構築を進める中で戦略的ポジションを担う人材の奪い合いが激化しており、人材確保のためには競争力ある給与の提示が欠かせなくなっている。図1:ジョブ型人事制度・職務給の導入背景 出所:筆者作成
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