睡眠障害を起こす原因として、加齢による睡眠の質の低下が考えられます。高齢になるにつれ深いノンレム睡眠が減って浅いレム睡眠が増えるので、中途覚醒しやすく睡眠時間は減りやすい。とりわけ問題なのが夜間不眠です。認知症の発症で外出の機会が減り在宅時間が増え、日中の昼寝の頻度が高まると夜眠れなくなります。そうなると、さまざまなトラブルが生じるリスクが高くなります。
私が診た患者さんに、夜眠れず活動的になり家族の睡眠中にベッドから立ち上がろうとして転倒した方がいました。家族に話を聞くと、日中の昼寝の時間が長いとのことだったので、日中は可能な限り起こして、仕事などで見守りができない日はデイサービスに通うよう伝えました。また、日中に昼寝をして過ごしていると、家族や周囲と生活リズムが逆になって交流する時間が減り脳が刺激されず、認知機能の低下速度も速まります。ほかにも不眠が続くと、もうろうとした状態になる「せん妄」を起こして不安を感じやすくなり、イライラから攻撃的になるケースも少なくありません。夜間不眠の予防策は5つ挙げられます。①朝日を浴びて日中に睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を抑え、夜にしっかり分泌させるようにする②散歩やデイサービスなど日中の活動時間を増やして昼寝を避ける③就寝時間を決めて寝る④カフェインを含む飲料は極力避ける⑤中途覚醒の頻度を減らせるよう就寝前にトイレを済ませておく。
ショートステイの利用は、デイサービスに比べて滞在時間が長く、不安を感じてストレスになりやすい。ストレスは脳血流量を低下させ、認知機能の低下速度を速める可能性が高いので、まずは自宅でできる生活改善から取り組むといいでしょう。それでも夜間不眠が改善しなければ、かかりつけ医に睡眠導入剤の処方を相談するといいでしょう。
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