2009年の8月21日、ガルフストリーム Vがジョージア州の沿岸地域に向けて飛行していた際、激しい雷雨の中を飛行することになったそう。観測のためにガルフストリーム Vに乗り込んでいたドワイヤー博士が「本当に死ぬかと思った」と語るほど激しい嵐の中を飛んでいたわけですが、その時に検知器が偶然にも3つの波を検知します。検知したのは511キロ電子ボルトのガンマ線であったそうで、これは電子と陽電子が対消滅した際に発生したものと考えられました。なお、ガンマ線を検知したのはわずか0.2秒ほどのごくごく短い時間であったそうです。当時、研究チームはガンマ線を検知した時間からガルフストリーム Vは1キロメートルから2キロメートル程度の大きさの陽電子の雲に突っ込んだ、と結論をだしました。ただし、どうやって陽電子の雲が生成されたのかまでは不明であったそうです。
この陽電子生成のプロセスを明確にモデル化するのに、ドワイヤー博士たち研究チームは5年もの年月をかけています。しかし、検知したエネルギーは陽電子が対消滅した際のエネルギーとしては低すぎるものであったそうです。そういうわけで、研究チームは検知されたガンマ線が陽電子ではないとすれば、「陽電子から生じた宇宙線」もしくは「外宇宙から飛来してきて何かしらの粒子と衝突し、超高層大気中でにわか雨を発生させる高エネルギー粒子」ではないかと推測しています。そして観測から6年後の2015年になってようやく反物質が存在していたかもしれないことが明らかになったわけですが、CERNの粒子物理学者であるジャスパー・カークビー博士は、ドワイヤー博士の検知したデータには「確かに信号がある」としながらも、「ドワイヤー博士の解釈を裏付けるための説得力が足りていない」とコメントしています。より具体的に言うと、ドワイヤー博士の研究チームが推測した陽電子雲のサイズ推測があいまいすぎる、とのことです。結局のところ、ドワイヤー博士率いる研究チームが2009年に検知したものが陽電子だったのか、その他の未知の反物質であったのかは現在も不