「父はギャンブルとタバコと銭湯が好きで、父親の膝の上でパチンコを打ったことも、タバコの火が額に落ちてきたこともありました。一緒に行って母に怒られないのって、銭湯だけだったんです。だからか、自分のルーツの中に銭湯があるように感じています」
社会に出て、関根さんはFinTech(フィンテック)のスタートアップ「ペイミー」で、ひょんなことからCOO(最高執行責任者)を務めることになった。ある日突然「経営者」であることが求められ、苦しい日々が続いたそうだ。「社員からは『絵が描ける人じゃなかったら経営者じゃない』言われ、世間からは『女性経営者はこうだよね』と型にはめられ、全て肩書きに紐づいて自分がみられている感覚で…身の丈に合わない役目だったと思います」そんなある日、初台の銭湯にふらっと立ち寄り、銭湯のおばあちゃんとなんでもないような話を20分くらいしたことがあった。話し終わった後、「なんか、明日も生きてみていいな」と思ったと、関根さんは当時を振り返る。
「銭湯って、別に何も解決はしてくれないんですよ。頑張ろうってすごい思うわけでも、誰かが慰めてくれるわけでもない。ただ、生きていくために必要な『心の健康』のベースをちょっとだけ作ってくれる。肩書きから外れて街の人とつながるあの時間の心地よさが、私を救ってくれました」銭湯に関連するビジネスを行う会社を立ち上げつつ、銭湯を回って「銭湯で働かせてください」と頼み回った。しかし、家族経営が基本の銭湯業界では、「働きたい=後継ぎと結婚する」と思う人も多く、お見合いを提案されることもあったそうだ。小杉湯のメンバー「銭湯って、社会的処方(プライマリーケア)の領域でも注目されているんです。イギリスでは、患者さん1人にかかりつけ医が必ず1人いて、薬だけじゃなく『社会の居場所』も処方する。その説明と出会った時に、銭湯と社会をつなげて見ることができました」例えば、関根さんが番台をしていたある日、認知症の80歳のおばあちゃんが弟と一緒に小杉湯にやってきた。おばあちゃんはもういないはずの母親が見つかるまでお風呂に入らないと言う。弟は疲れた様子で、「もしお風呂に入らなかったら、その辺に座らせて待たせておいてください
「でも、私みたいな第三者だったら、おばあちゃんと一緒に喋って弟さんを待つことができます。私は認知症を治せるわけでも、弟さんの心のケアができるわけでもないけれど、一時的におばあちゃんは社会とつながって、弟さんはお風呂で休めるっていう、なんかこれだけで良くて。それこそが社会と接続するケアの形なんだと気づいた時に、小杉湯ってすごく社会の課題に向き合っているなと思えたんです」「もちろん解決できる課題もたくさんあると思いますが、小杉湯が関わるケアの文脈や社会的な分断って、今日明日で解決できるものじゃない。銭湯ができることって、何かを変えようとか変革しようというよりも、『このままでどう受け入れられるか』という社会的な受容力をどこまで上げられるかだと思っています」
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