ドイツの政権運営が揺れている。現在のドイツの政権は、オラフ・ショルツ首相を擁する中道左派の社会民主党(SPD)を首班とし、第1パートナー政党を環境左派の同盟90/緑の党(B90/Gr)、第2パートナー政党を自由主義の自由民主党(FDP)から成る連立政権である。その連立政権を混乱させているのが、B90/Grである。2023年8月22日、ノルトライン=ヴェストファーレン、シンメラートにある風力発電所の視察中、記者団に語るドイツのオラフ・ショルツ首相(SPD) - 写真=dpa/時事通信フォト
ドイツ経済の復調には、外国からの投資流入が必要不可欠である。にもかかわらず、B90/Gr出身のロベルト・ハーベック副首相兼経済・気候相は、中国を念頭に、ドイツ向け投資に対する規制の強化を模索している。ショルツ首相や経済界は中国との関係を重視しているが、ハーベック副首相はそれとは真逆のスタンスを貫いている。投資政策のみならず、財政政策の在り方に関しても、B90/Grは連立政権の足並みを乱している。ショルツ政権は8月16日、数十億ユーロ規模の法人税を減税することで経済成長を後押しする「成長機会法案」を審議した。自由主義の立場から「小さな政府」を良とするFDPの肝いりの法案だったが、B90/Grの反対で合意に達しなかった。
SPDは左派政党だが、責任政党としての経験が豊かであり、現実的な対応ができるしかし責任政党としての経験に乏しいB90/Grの場合、SPDとの違いを明確する必要があるとはいえ、理念先行の主張に終始している。これまでのところ、3党連立の足並みを乱しているのは、FDPではなく、むしろB90/Grといって差し支えない。このようにドイツの政治をかき乱すB90/Grに対し、有権者の支持も離れている。政党支持率調査を確認すると、B90/Grの支持率はロシア発のエネルギーショックが生じた2022年半ばに、最大野党である中道右派のキリスト教民主同盟・同社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ2位につけていたが、今は4位にまで低下している(図表2)。
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