アーティストの1年を締めくくる歌唱シーンをどう演出していくかについては、NHKから積極的に提案することもあれば、出演者サイドからアイデアが出ることもある。本当に千差万別で、「全体的にこうです」とは言いにくい。――11月中旬に出演歌手の発表があるが、それ以前から「内定」の形で交渉し、演出についても考え始めている?
オフィシャルには11月中旬の正式発表の直前に出演交渉していることになっているので、いつから何を議論しているのかは、ちょっと言いづらいんですが......まあ、基本的には歌手発表の後に、どういう演出にするかを議論しています。紅白って比較的短時間で一気に作る番組で、それまではスタッフもみんなレギュラーの番組を抱えている。紅白が近づいてくると一斉に参加して、担当のアーティストを決めて、僕が統括する形で進んでいく。 ありがたいことに、紅白は1年の締めくくりということでアーティストも気合が入っている。一緒に作っている感覚がすごくありますね。担当のディレクターがアーティストと日々やり取りし、最高のパフォーマンスを引き出すにはどうしたらいいか、衣装は何を着る、ステージの演出はどうすると議論しながらやっていく。必ずしも、NHKが「こうしてくれ」と言う通りになるわけではない。――MISIAのステージの演出については?そこでときどきゲストを迎えるなかで、LGBTQに関しては3年くらい前かな、「台湾LGBTプライド(LGBTパレード)」に彼女が参加した頃に、「プライドハウス東京」をやっている松中権さんや、「東京レインボープライド」の中心的人物である杉山文野さんをゲストに呼んだ。そこでは、台湾がいかに同性婚実現に向けてアジアでリードしているかや、プライドパレードが素晴らしかったという話をしてもらった。
ドラァグクイーンのhossyとマーガレットに来てもらって、彼らが考えるLGBTムーブメントみたいな話をしたこともある。節目節目で、MISIAのLGBTQへの思い、セクシャルマイノリティへの差別・偏見を少しでも減らす社会を目指したいっていうアーティストとしてのメッセージみたいなものを発信する番組を一緒に作ってきた。 ただ、紅白でああいうことをやりたいと言ってきたのはMISIAです。出演交渉を進めていくなかで、司会が綾瀬はるかさんなので、彼女が主演したヒットドラマ「義母と娘のブルース」の主題歌「アイノカタチ」を歌うこととともに、(オリンピック・パラリンピックのある)2020年には日本が世界にどうメッセージを伝えるかが大事というような話をした。そこで、多様性などについてMISIAが日頃発信しているものを紅白という場で表現してみようか、となったんです。
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