でも、いろいろある中で、リベラル派の皆さんが最も騒いでいるイシューは、先月死去したルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事の後任指名について。今回は、なんでこの話題がこんなに重要なのかを解説しよう。本当は、理解するのに必要なポイントは2万個以上あるが、そんな説明は大変すぎるから、僕も大統領を見習って敏腕税理士に5つだけに減らしてもらった。日本の皆さんが想像する以上に、アメリカでは最高裁の影響力が大きい。まず、最高裁の活動の範囲が広い。一番の仕事は法律の合憲性を審理すること。違憲だと判断した場合、議会で満場一致で成立した法律でも無効にできる。まさに最高の権威を持っているし、他国よりも高い頻度でその力を振るっている。同時に、上告された国民の個人同士の裁判もやる。スーパーマンが地球を壊滅から救った帰り道で迷子の子猫も助けるような、広範囲の活動だ。
次に、最高裁の判決は国民の日常生活に重大な影響を及ぼす。19世紀には最高裁が合憲だと判断したため、奴隷制度、その後の人種分離制度が許された。最高裁が動かなかったことで、黒人は苦しい生活を強いられた。同様に、第2次大戦中の日系アメリカ人の強制収容も止めなかった。同様に、2003年に同性愛のセックスを性犯罪とする法律も違憲とし、2013年には同性愛者の結婚も認めた。1973年に中絶を受ける権利を認めた。1996年には公立学校の女性入学拒否に違憲判決を出した。しかし、同時に、2010年には企業による政治献金の制限をなくして「金と政治」をさらに強く結び付けた。2013年に、黒人の投票を阻害するための不公平な投票制度が過去にあった州への、連邦政府による管理は違法だとした。そのあと、南部の州を中心に黒人や貧困層などの投票を妨げる「投票抑制策」が再び急増した。
なんといっても、アル・ゴア大統領候補が得票数でリードしていた、2000年の大統領選挙後にフロリダ州の票の再集計を止めて、ブッシュ・ジュニアを大統領にしたのも最高裁。そう、京都議定書から離脱した、うそ情報を口実にイラクへの侵略戦争を起こした、対応が遅れて1800人も犠牲になったハリケーン・カトリーナ襲来時もバカンスを続け、被災地に立ち寄りもしなかった、あのブッシュ大統領は5人の最高裁判官が誕生させたのだ。
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