久しぶりに、ロマンチック・コメディー(ロマコメ)に大ヒット作が生まれた。昨年12月に全米公開された『恋するプリテンダー』(日本公開は5月10日)は、全世界の累計興行収入が既に2億1900万ドル(5月2日時点)超。ロマコメ作品としては『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(2016年)、『クレイジー・リッチ!』(2018年)以来となる2億ドル突破の快挙を達成した。
シドニー・スウィーニーとグレン・パウエルという今注目の俳優2人が、惹かれあいながらもすれ違う男女を演じる、泣き笑い必至の王道ロマコメ。日本にゆかりのあるウィル・グラック監督に、本誌・小暮聡子が見どころを聞いた。世界は「楽しい」映画を求めているんだと思う。この作品は、ロマンスと音楽の要素があるとても楽しい映画で、舞台は美しいシドニー、主役の2人も美しい。特に誰かと一緒に映画館で見てもらうと、さらに楽しめると思っている。この映画自体が、誰かと一緒に笑ったり泣いたり、歌ったりすることそのものだから。 いま、映画館に出向いて映画を観るというのは移動時間も含めれば5時間がかりのイベントだ。それだけのことをやるに値する映画は何かと考えたとき、大きな予算をかけたかとか、大がかりな仕掛けがあるとか、スーパーヒーローがいるかどうかということより、他の人と一緒に良い時間を過ごせたかどうかだと、私は思う。そう。そして映画を見終わった人たちの様子をTikTokなどで見ると、劇中の歌を歌いながら映画館を後にしている。実際に足を運んで、みんなが特大のスマイルで劇場から出てくるのも目にした。物語の筋書き自体はシェイクスピアの戯曲『空騒ぎ』から来ているのだが、現代は本当の気持ちを語ることに臆病になり、自分の周りに殻を作ってしまいがちだとは言えると思う。主人公の2人は、互いに気持ちがあるのに誤解があるせいで相手を嫌いなふりをして......
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