年間800億枚の衣料を生産するのに大量の水と有害な化学物質を使う。世界全体で6人に1人が衣料品業界で働いているが、ほとんどの場合、危険な労働環境で賃金はごくわずか。売れ残りや廃棄された製品がごみの山にもなる。
こうした問題を解決する万能薬はないが、お先真っ暗というわけではない。持続可能な方法を求めて、さまざまな可能性が模索されている。中古衣料の購入、レンタル、リサイクル、オンデマンド3Dプリント、バイオ材料、生産拠点を国内に戻す、有機・天然繊維、とにかくあまり買わないようにする......。 環境と人間へのダメージが最も大きいのはジーンズかもしれない。本誌ファッション担当の筆者は新著『ファッショノポリス』で、この世界一普及した衣料品の病弊と、その製造に伴う問題の一部解決に役立つ可能性のあるプロセスについて探った。人類学者によれば、今この瞬間、世界中の人間の半数がジーンズをはいている。ジーンズの年間製造数は50億本。平均的なアメリカ人はジーンズを7本所有し、毎年4本新調する。「私がジーンズを発明したかった」とフランスのデザイナー、故イヴ・サンローランはかつて語った。「ジーンズの豊かな表情、謙虚さ、セックスアピール、シンプルさ──私が自分の服に求めているものばかりだ」
下着や靴下などべーシックなものを除けば、ジーンズは最も普及している衣料品だ。かつてアメリカの繊維・衣料製造業の主力製品だったが、リーバイ・ストラウス社を皮切りに生産拠点の国外移転が進んだ。2013年4月、バングラデシュで複数の縫製工場が入居するビルが崩壊して1134人が死亡、2500人が負傷した際も、労働者の多くはジーンズの縫製・検査作業中だった。そしてジーンズは、製造過程や使用後に環境に与えるダメージも深刻だ。