文武両道から生まれた主体性が、県太田の強みだ。午後5時過ぎ、模擬試験を終えた2年生12人がグラウンドに集合する。ウオーミングアップの内容から、ひと味違う。部員が順番に声を出し、“出題”しあう。頭を使う独自の練習メニュー。考案したのは、選手たち自身だ。小林風斗主将(2年)は「状況をとっさに判断する場面は野球でも必ず生じるので」と説明した。
20年度の国公立大への現役合格者数は135人。県内有数の男子進学校だ。過去には野球部から東大へ現役合格した者もおり、校訓の文武両道を体現している。勉強時間を確保するため、平日の練習時間は2時間、土日も3時間程度と短い。東大志望の加賀遼大投手(2年)は「朝5時に起きて2時間、家に帰って21時から0時まで3時間。計5時間くらいは勉強するようにしています」。両立を果たすべく部員たちは日々奮闘している。 昨年は春、夏と連続で県4強入り。春は13年夏甲子園優勝の前橋育英を倒すなど、短い練習時間でも結果を残してきた。岡田友希監督(45)は「本格的な主体性を意識してチーム作りをしています。本来ならば監督の腕の見せどころである練習メニュー作りも、選手に任せています」。主将、副主将を中心に作成してきたが、この冬は小林主将の「全員に自覚を持って欲しい」との考えで、選手全員でメニュー作りを行っている。22人を5班に分け、ひとつの班が1週間分のメニューをつくるローテーション制。同監督は「今まではただやっていた練習も、より一層身が入るようになったりアドバイスを送りあえるようになりました」。成長を肌で感じている。
昨年の新チーム発足時は、緊急事態宣言が発令された影響で学校は分散登校に。野球部は8月中旬から秋の県大会まで、全体練習が一切出来なかった。中でもバッテリー間での練習に影響。正捕手の小林主将は「(背番号1で抑えの)長沢、(秋の県大会全試合先発の)木部とは1度もブルペン入り出来ませんでした」と振り返る。だが困難な状況下でも県8強入り。どんなときでも自分たちで考え、工夫する主体性が、結果につながった。 今度は全国に通用することを証明したい。岡田監督は「本当にいい子たちなんですよね。なんとか甲子園の土を踏ませてあげたい」と話した。1900年(明33)の野球部創部から、春夏通じて甲子園の出場はない。悲願の初出場へ、吉報を待つ。【阿部泰斉】
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