[上海/香港 25日 ロイター] - 中国版ナスダックと称される「科創板」が、早ければ6月から上海証券取引所の一部として始動する。新規株式公開(IPO)の方式が一変するため、価格設定や投資家への販売などで従来は必要なかった独自の裁量や工夫が求められる投資銀行業界では、戸惑いが広がっている。これまでのIPOは、プライシングに関する当局の指針によってバリュエーションが抑えられ、投資銀行は簡単に買い手を見つけられた。ある投資銀行家は「以前ならIPOで株式を売るのは楽だった。これからは関心を持つ投資家を見つけ出し、上場企業や属する業界の将来性を語る必要が出てくる。時間がかかるし、費用もかさむ」とこぼした。
投資銀行業界が不安を感じているのは、中国の幅広い資本市場改革の一環として科創板に試験導入されるIPOの登録制度だ。業界は、当局の定めた指針に従って粛々と手続きを進めることに慣れきっていたが、登録制になれば香港やニューヨークなどと同様にプライシングを巡って利害が相反することが多い上場企業と投資家それぞれと話し合った上で着地点を探らなければならない。科創板のIPOでは企業の質やタイミングに関連した政府の規制は撤廃され、まだ黒字化していない新興企業の上場が可能になる。また非公式ながらも慣例化していた公開価格の上限規制も廃止される。 Chang氏は、根本的なルール改正によって投資銀行業界の再編や淘汰が加速し、中国版のゴールドマンやシティ、JPモルガンが登場してくる公算が大きく、強力な4─5行以外に生き残れる銀行はそう多くないだろうとみている。申万宏源集団は、投資銀行部門を再編して業界別チームを立ち上げ、ハイテクやヘルスケアなどのセクターの専門家を育成する構えだ。同時に香港への上場を通じて11億6000万ドルを調達している。引き受け部門のマネジングディレクター、Tu Zhengfeng氏は「われわれはグローバルな投資銀行の構造に向かって進んでいる。企業の本源的価値をつかむことの重要性が増しており、そのための専門性が求められている」と説明した。
またこれまでの中国のIPOで形式的なイベントにすぎなかった投資家向け説明会について同氏は、当該企業の株をなぜ買う必要があるか、価格はどのように決まったなどをしっかり伝えなければならなくなったと強調した。
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