損保業界において「丸の内」といえば、本社ビルが皇居の眼前、千代田区丸の内にある東京海上日動火災保険のことを指す(現在は本社ビル建て替えのため常盤橋地区に移転)。その東京海上といえば、優秀な人材の多さに加え、何より給料が高いことでもよく知られている。名実共に、損保業界の盟主といっても過言ではない。
ここに、ある内部資料がある。損保会社の全国型社員(いわゆる全国転勤がある総合職のこと)の標準賃金をまとめたものだ。新卒で入社すると担当者からスタートし、その後主任や課長代理、課長といったふうに昇進していく。この資料には、年齢と役職に応じた年収が記載されている。4社とも初任給に大差はなく、350万~400万円あたりからスタート、その後は右肩上がりで年収が増えていく。年収1000万円の壁を突破するのは、あいおいを除いた3社が30歳前後と、さすが大手金融機関だけに給料水準は高い。ちなみに、あいおいが1000万円を突破するのは30代後半であり、他の3社に比べて総じて給料水準は低めだ。 次に差がつくのは、課長代理から課長に昇進する頃だ。ここで東京海上が頭一つ抜け、損保ジャパンと三井住友海上を引き離していく。これら4社の給料の推移は次ページ図を参照していただくとして、本特集の主題である役職定年に話を移そう。
大手4社とも、「かつて役職定年制度はあったが、今はない」というのが正式回答だ。ここで、役職定年を「一定の年齢になると管理職を管理職でなくし、その分のポスト給が減少する」と定義すれば、確かに役職定年制度はない。だが取材を進めていくと、各社とも役職定年に類する制度があることが明らかとなった。 東京海上では一定の年齢になるとポストオフし、年収が3割減となる制度が存在する。また、三井住友海上とあいおいは、一定年齢になれば給与テーブルが変わる制度を導入。ジョブ型の制度を一部で導入した損保ジャパンは、人物本位の人事制度に改定したばかりだ。次のページ