先月、出席した末の息子の卒業式でも、校長のはなむけの式辞は「常に感謝の心を持ってほしい」だった。式典後、校門を出た卒業生たちは、コロナ禍の体調を気遣い、親身になって進路の相談に乗ってくれた担任や部活動の顧問に、プレゼントを渡したり写真を撮ったりして感謝の気持ちを伝えていた。学校の先生や介護、医療従事者といった、私たちの暮らしを支えてくれるエッセンシャルワーカーの人手不足は深刻だ。沖縄の産業をけん引する観光業や飲食業もしかり。多くの業界が直面している課題だ。
賃金の引き上げをはじめ、職場環境の改善、福利厚生の充実、AIの導入など、人材確保に向けた解決策が打ち出されてきてはいるが、職種や業界、会社の規模によっては時間がかかったり、根本的な解決にはほど遠いと感じたりする施策もあり、一筋縄ではいかない。では、どうすればいいのか。「生ぬるい」と、お叱りを受ける覚悟で明かすと、私は「感謝」の気持ちを率直に伝えることにしている。 コロナ禍でも学校行事を工夫して開催してくれた先生たちには、アンケートにびっしりと感謝の思いを書き、宅配便を受け取る時には「暑い中、お疲れさまです」、飲食店のレジでは「おいしかったです」と感謝の意を込めて言う。沖縄戦や米軍基地のことを全国で放送すると、県内の同業他社の先輩記者から、きまっていただく言葉がある。「見たよ」でも「お疲れさま」でもない。「県外に伝えてくれてありがとう」だ。そして、時に弱腰になる私に、「やりましょうよ」と背中を押してくれる上司と同僚が沖縄と東京にいる。そこへの感謝の思いは、次の取材の原動力になる。
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