こうした過去の事例から、東アジア地域に根付いている仏教や道教、儒教のイデオロギーの中では「個人より周囲との調和や相互の結びつきが幸福に重要な影響を与えている」ということに気付いたガーディナー氏らの研究チームは、SHSと日本で開発された「実験には、世界63カ国・42の言語圏に住む合計1万5368人の被験者が参加。被験者らは、研究チームが用意したウェブサイトにアクセスして、SHSとIHSの2つの幸福度テストを受けました。この実験の結果、ベルギー・デンマーク・イギリスなど西ヨーロッパ諸国では、SHSの正確性が高いことが確かめられました。これについて研究チームは、「産業化が進んでいて人口増加率が低く、気候が寒冷という特徴がある西洋の典型的な国では、おしなべてSHSの信頼性が高い傾向がありました」と分析しています。
一方IHSは、特に日本や韓国などのアジア諸国で正確性が高く、西洋諸国では信頼性が低いことが分かりました。「IHSの精度は、その国の経済的発展との関連性が弱く、『統制がとれていること』を重視する国で高くなりました。特に興味深いことに、IHSの精度はその国の西洋化とは全く関係がありませんでした。従って、西洋では精度が低いとはいえIHSはSHSよりも普遍的な幸福度の尺度といえるかもしれません」と研究チームは述べています。 研究チームを最も驚かせたのは、「日本とアメリカは、SHSとIHSのどちらも信頼性が高かった」という点です。これについて、ガーディナー氏は「とても興味深い意外な結果です。なぜなら、日本とアメリカは心理学者が異文化間の違いを語る上でよく引き合いに出される、対極的な2国だからです」とコメントしました。
この研究により西洋と東洋における幸福の違いのほか、中東やアフリカ諸国など西洋でも東洋でもない地域ではSHSもIHSも精度が低いことが分かりました。研究チームは論文の中で「キリスト教や仏教の伝統がない国では、いずれの幸福度テストも適切に機能しませんでした。将来的には、そのような地域のための新しい幸福度テストが必要なことも考慮に入れる必要があります」と結論付けています。
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