[ロンドン 4日 ロイター] - 運動センサーを内蔵した指揮棒から発進される無線電波が、演奏者の手首や足首に装着した振動機器に情報を伝えることで、振動を通じて指揮者の動きが把握できるシステムが開発された。視覚に障害のある奏者がオーケストラと共演する機会の拡大につながりそうだ。指揮棒のセンサーは微妙な運動まで感知し、さまざまな種類の振動で指揮者が示す速度や強弱の情報を奏者に伝える。
子どものころ白内障の手術で失明したバイオリニスト、Abie Bakerさんは、この機器があれば自信を持って他の奏者と同時に弾き始めることができると説明。ロイターに、「いままでは、周りの音を聞くことに頼っていた。他の奏者が楽器を構える音を聞いて、だいたいの感覚で弾き始めのタイミングを判断していた。(この機器があれば)、数えたりする必要はなく、文字通り振動を感じることで始まりのタイミングを知り、弾き始めることができる。しかも、自信を持って正しいタイミングが分かる。素晴らしい」と語った。 全盲のピアニスト、Kevin Satizabalさんは、ソリストとしてオーケストラと共演する際には、始まりを把握するため指揮者の近くに配置してもらって息遣いを聞く必要があったと説明。「大きな楽団と演奏するときには指揮者から遠く離れることになり、(始まりの)情報を得るのがきわめて難しくなる。この技術は本質的に指揮者の動きに自分が入り込むものであり、わくわくする」と語った。システムは開発途上で、現在は試作品として楽団などが試験的に使用しているが、Matossianさんは2020年までにはレンタルや購入ができるようにしたいという。