2021年5月17日、最高裁判所は、全国4か所の原告団による建設アスベスト健康被害集団訴訟について統一的な判決を言い渡し、国の責任を認めました。また、最高裁は、民法719条後段の類推適用により、建材の市場占有率の大きい建設材料のメーカーの賠償責任についても幅広く認めつつ、高裁でメーカーごとの責任の範囲や賠償額を審理し直すよう命じました。その後、各地の差戻審において続々と和解が成立しています。
最高裁は、1975年10月1日から2004年10月1日の間、国により呼吸用保護具の使用義務付け等に関する適切な規制がなされていなかったとして、同期間内に屋内の建設現場で働いてアスベストにさらされたことにより健康被害に遭われた方に対し、国の責任を認めています。なお、個人事業主として建設業に携わるいわゆる一人親方も救済の対象となっています。直近では、2024年2月21日付で最高裁裁判所第3小法廷は、北海道建設アスベスト第1陣訴訟について、被告建材メーカーの上告および上告受理申立について、上告棄却および上告を受理しない旨の決定がなされました。建設アスベスト給付金制度は、建設業務に従事していた方のうち、1972年10月1日から1975年9月30日までの間に石綿の吹付け作業を行っていた方及び1975年10月1日から2004年9月30日までの間に屋内作業を行っていた方で、アスベストを原因とする一定の健康被害を受けた方を対象に、国から最大で1,300万円が支給されるというものです。大工、左官、鉄骨工、溶接工、ブロック工、 軽天工、タイル工、内装工、塗装工、吹付工、はつり、解体工、配管設備工、...
厚生労働省により公表されている建設アスベスト給付金の認定審査会の議事録によると、建設アスベスト給付金の申請は毎月100~300件程度審査されており、審査されたほぼ全ての件について認定相当と判断されています。しかし、厚生労働省の発表によると、2010年から2020年の間に限っても約1万人の建設労働者がアスベストを原因とする労災認定を受けています。労災に加入していなかった建設労働者も多数存在することを考えると、被害救済はまだまだ進んでいません。 上記最高裁判決及び建設アスベスト給付金制度は、多くの被害者が救済の対象となりうる大きな意義のあるものです。2022年6月22日に厚生労働省が公表した「令和3年度 石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめ」図3-1によると、アスベスト疾患による労災認定者のうち建設業の占める割合が61.6%と最も多く、(参考URL:
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