狙って節目に到達すると菅野は力強く拳を握った。4—2の6回2死。追い込んでからの8球目、代名詞のスライダーに村上のバットが空を切った。「あと1個と意識していたし、いい打者から取りたいと思っていた。思い出に残る三振になった。三振を取れるとしたらあのボールしかなかった」。史上60人目の通算1500 奪三振 を達成し、6回0/3を5安打2失点でリーグトップタイの4勝目。首位に浮上したチームにも自身にも明るい話題が並んだ。
序盤から強風に見舞われたが、初回を最少失点に踏ん張りツバメ打線を斬った。多彩な変化球を駆使しながら直球も丁寧に投じ、オスナ、村上、サンタナの中軸には1安打のみ。村上からは2三振、サンタナからは1三振を奪い、大きな仕事をさせなかった。開幕から無傷の4連勝以上は20年以来自身5度目。を抜いて球団最速。学生時代は「三振を取るために投げていた。三振こそ正義。小中高大、何点取られてもいいから三振だけは取ってやろうという感じだったと思う」と述懐する。プロ入り後は「少ない球数で長い回を投げたい」と「1試合27球」の究極の理想を持つが、「三振は絶対に取れた方がいい。狙って取れればいい」と状況に応じて奪う必要性も心に刻んでいる。
12年目を迎え、より冷静に、視野を広く相手を見られていることが好投への近道になっている。1試合のプランを立てた中で、好調ではなくとも「ここは振ってこないだろうなとか、打者と対戦しているなと思うし、駆け引きもできている」。昨季までは調子が悪ければ自分との戦いになりがちだったといい「野球の本質的な部分で打者と勝負しないといけないのは少し忘れていた」と見つめ直した。 今季のチームを「接戦をものにしているところが一番の強み。去年と違うところは僕も含めてそこだと思う」と分析し、「今の強さを引き続き最後まで示したい」と気を引き締めた。歓喜の時まで、白星を並べ続ける。(田中 哲)
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